❶ 調達資金の使途
グリーンローンにより調達される資金は、明確な環境上の便益を有するグリーンプロジェクトに充当されるべきです。具体的な資金使途の例やリファイナンスに該当する場合の具体例については、グリーンボンドと同様です。こちらをご覧ください。
❷ プロジェクトの評価と選定のプロセス
借り手は、グリーンプロジェクトの環境面での持続可能性に係る目標(Objective)、資金調達予定のグリーンプロジェクトが、適格なグリーンプロジェクトの分類に含まれると借り手が判断するプロセス(Process)、及び関連するプロジェクトに付随すると認識された、実際の又は潜在的な、環境的、社会的リスクを特定・管理するプロセスについての補完情報を事前に貸し手に説明すべきです。
なお、グリーンローンにより調達される資金の充当対象となる個別のグリーンプロジェクトが決定していない場合には、借り手は、調達資金の充当対象とするグリーンプロジェクトが環境面での持続可能性に係る目標に合致すると判断するための規準(Criteria)についても策定し、事前に貸し手に説明すべきです。
プロジェクトの評価と選定のプロセスについて、グリーンローンに期待される事項は、グリーンボンドに期待される事項と同様です。こちらをご覧ください。
伝統的にローンは貸し手と借り手企業の相対取引であることを踏まえて、グリーンローンの組成においては、貸し手企業がプロジェクトの選定基準やプロセスを定めたグリーンローンフレームワークの策定を伴走することにより、円滑な融資が行われることも考えられます。
❸ 調達資金の管理
調達した資金は、グリーンプロジェクトに充当されるよう、適切に追跡管理されるべきです。調達資金の管理は、グリーンプロジェクトに対する借り手の投融資業務に関連した正式な内部プロセスにおいて、借り手によって証明されるべきであり、借り手は、未充当資金の残高についての想定される一時的な運用方法を貸し手に知らせるべきです。
また借り手は、グリーンローンにより調達される資金の追跡管理の方法について、貸し手への事前説明をすることが望ましいです。
調達資金の追跡管理の方法の具体例
- 調達した資金を、会計上区別された補助勘定を設けて記入し、グリーンプロジェクトに充当した場合に、当該補助勘定から支出する。
- 社内システムや電子ファイルにより、調達資金の全額とグリーンプロジェクトへの充当資金の累計額を管理し、定期的に両者を調整し、後者が前者を上回るようにする。
- 調達資金を別口座に入金しその全額をその他の事業資金と区別して管理する。グリーンプロジェクトへの充当は、当該別口座から行う。
- 調達資金の管理については、証憑となる文書等を適切に保管しておく。
❹ レポーティング
借り手は、資金使途に関する最新の情報を作成・維持し、容易に入手できるようにすべきであり、このような情報は、グリーンローンが全額実行されるまで(又は、リボルビング・クレジット・ファシリティの場合はファシリティ期限まで)年に一度は更新し、かつ、重要な変化があった場合は速やかに更新すべきです。この年次報告書には、グリーンローンの調達資金を充当されているグリーンプロジェクトのリスト、各グリーンプロジェクトの概要、充当された資金の額、期待されるインパクト、また可能な場合には達成されたインパクトを含めるべきです。情報は、プロジェクトに参加している機関のみに提供する必要がありますが、グリーンローンであることを表明する場合には、借り手は、グリーンローンにより調達した資金の使用に関する最新の情報を、資金調達後に一般に開示することが望ましいです。
シンジケートローンの場合、貸し手たるアレンジャー金融機関(債権譲渡人)及び参加金融機関(債権譲受人)の関係性において、借り手が開示した情報の範囲を超えて、参加金融機関からレポーティングにおけるグリーン性に係る情報の提供の要請があった場合、当該グリーンローンに係る情報はグリーンウォッシュを避ける上で重要な情報であることから、アレンジャー金融機関は、要請内容の重要性や組成状況を勘案しながら、真摯に対応を行い、借り手に当該要請を受諾して開示するよう推奨することが望ましいです。
開示情報例や具体的なレポーティング例、期待されるインパクトに係る指標、算定方法等については、グリーンボンドの例と同様です。こちらをご覧ください。
❺ レビュー
借り手が、グリーンローン又はグリーンローンのプログラムがグリーンローン原則の4つの核となる要素に適合しているかを評価するために、外部レビュー機関によるレビューを活用することが望ましいです。レビューを活用することが望ましい場合としては、例えば以下のような事項の適切性の判断を要する場合が考えられます。
レビューを活用できる事項の主な例
1)グリーンローンによる資金調達前のレビュー
- 調達資金の具体的使途として予定しているグリーンプロジェクトの適切性を評価するもの。
- 調達資金の充当対象となるグリーンプロジェクトを評価・選定するための規準や、当該規準に基づくグリーンプロジェクトの評価・選定の実施体制の適切性を評価するもの。
- グリーンローンにより調達される資金の追跡管理の具体的方法の適切性を評価するもの。
- グリーンプロジェクトによりもたらされることが期待される環境改善効果(リファイナンスの場合は、実際に生じた環境改善効果)の適切性(環境改善効果の算定方法や、算定の前提条件の適切性を含む)を評価するもの。
2)グリーンローンによる資金調達後のレビュー
- グリーンローンにより調達された資金の管理や、グリーンプロジェクトへの調達資金の充当が、実施前に借り手が定めた方法で適切に行われていたかを評価するもの。
- グリーンローンにより調達された資金を充当したグリーンプロジェクトによりもたらされた環境改善効果が、実施前に借り手が定めた方法で適切に算定されているかを評価するもの。
さらに、外部レビューを取得した場合は、守秘義務や競争上の配慮をした上で、外部レビュー又はその適切な要約を、ウェブサイト等を通じて一般に開示すべきです。
外部レビュー機関が則るべき事項や評価するべき事項、外部レビューに関する情報の記載例についてはグリーンボンドの場合と同様です。こちらをご覧ください。
なお、グリーンローンがグリーンローン原則の主要な特徴と適合していることを確認するための内部的な専門性を実証又は確立した借り手の場合、外部レビュー機関によるレビューではなく借り手による自己評価で足りる場合もあるものの、借り手は、関連する内部プロセスやスタッフの専門知識を含め、そのような専門知識を徹底的に文書化することが望ましいです。
より詳細なグリーンローンガイドラインに関する情報はこちら。
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