ポイント

小売企業としてサステナビリティ・リンク・ボンドを発行した最初の事例

  • TESCO社は、イギリスに本社を置き、中央ヨーロッパにも展開する小売業(スーパーマーケット)を主体とする企業である。TESCO社は、2009年に世界で初めてゼロカーボン目標を設定した企業で、その後、FTSE100企業の中で初めて、1.5度目標に沿ったSBTに基づく炭素削減目標を設定。
  • TESCO社発行のSLBは、小売企業として初のサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)発行である。2021年1月、サステナビリティ・リンク証券フレームワークを策定し、同フレームワークはサステナリティクスによる独立した評価を受けている。
  • 2020年10月にTESCO社はサステナビリティ・リンク・ローンを調達しており、今回のボンドは、サステナビリティに対する同社のコミットメントをさらに前進させる位置づけである。

詳細

発行概要 発行年月 額(百万EUR) 償還期日 利率
1 2021/1 750 2029/7 0.375%
  • 国際資本市場協会(ICMA)のサステナビリティ・リンク・ボンド原則に基づき、サステナビリティ・リンク証券フレームワークを策定。
  • 2021年1月にサステナビリティ・リンク証券フレームワークを策定。
サステナビリティ計画との関係
  • TESCO社のサステナビリティ戦略「Little Helps Plan」は、People(人)、Product(製品)、Planet(地球)、Places(場所)の4つの柱のうち、TESCO社およびTESCO社のステークホルダーにとって最も関連性の高いサステナビリティの側面に焦点を当てている。
  • 「Planet(地球)」のマテリアリティとして特定されている気候変動に関しては、2017年に1.5℃目標に沿ったSBTを取得。2050年までにグループ全体 のGHG排出量を2015年比で100%削減することを念頭に、以下のSPTが設定されている。
SPTs
  • SPT 1:グループ全体のGHG排出量を、2025年までに2015年比で60%削減。
  • SPT 2:グループ全体のGHG排出量を、2030年までに2015年比で85%削減。
KPIs
  • グループ全体でのGHG排出削減量(スコープ1および 2、単位:t-CO2e)
    *なお、TESCO社はスコープ3の排出量に関する目標を設定しているが、これらはKPIの対象ではない。
債券の特性
  • TESCO社のパフォーマンスが規定のSPTsを達成できなかった場合、クーポンの調整またはプレミアムの支払いが発生する。関連するKPI、SPT、クーポン増額またはプレミアム支払い額は、特定の取引の関連文書(例:関連SLBの最終条件書)に明記される。
レポーティング
  • 年次、及び、SLBのクーポンの増額やプレミアム支払いなどの潜在的な調整に繋がるSPTのパフォーマンス評価について、TESCO社のウェブサイトにて関連情報を公開。
  • 関連情報の例として、KPIのパフォーマンスの最新情報(ベースラインを含む)、SPTに対するKPIのパフォーマンスを概説した報告書、および投資家がKPIの進捗状況を把握できる情報が含まれる。
検証
  • 発行後、年次及び必要な場合に、独立した外部検証を求める。
外部レビュー
  • サステナリティクス社によりサステナビリティ・リンク証券フレームワークに対するSPOを取得し、ICMAのサステナビリティ・リンク・ボンド原則(SLBP)との整合性が確認されている。
  • 1 Tesco社は、Booker Group、Tesco Bank 、Tesco Mobile等を子会社化しているグループ企業である。
  • Sustainalytics(2020)“Second Party Opinion”
    Tesco (2021) “Tesco Sustainability-linked Bond Framework”等を基に環境省作成