企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券をグリーンボンドと呼びます。
主な特徴
- 調達資金の使途がグリーンプロジェクトに限定される。
- 調達資金が確実に追跡管理される。
- それらについて発行後のレポーティングを通じ透明性が確保される。
主なグリーンボンドの発行主体
- 自らが実施するグリーンプロジェクトの原資を調達する一般事業者
(専らグリーンプロジェクトのみを行うSPCを含む。) - グリーンプロジェクトに対する投資・融資の原資を調達する金融機関
- グリーンプロジェクトに係る原資を調達する地方自治体
主なグリーンボンドへの投資家
- ESG投資を行うことを表明している年金基金、保険会社などの機関投資家
- ESG投資の運用を受託する運用機関
- 資金の使途に関心を持って投資をしたいと考える個人投資家
グリーンボンドの種類
グリーンボンド原則(The Green Bond Principles: GBP)(International Capital Market Association: ICMA発行)では、グリーンボンドの種類として、以下の4つが示されています。それぞれ、償還原資等の点で違いがあります。
- 1Standard Green Use of Proceeds Bond
- グリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券。特定の財源によらず、発行体全体のキャッシュフローを原資として償還を行います。
- 2Green Revenue Bond
- グリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券。調達資金の充当対象となる公的なグリーンプロジェクトのキャッシュフローや、当該充当対象に係る公共施設の利用料、特別税等を原資として償還を行います。
例えば、外郭団体が行う廃棄物処理事業に必要な施設の整備や運営等を資金使途とし、当該事業の収益のみを原資として償還を行う債券がこれに該当します。 - 3Green Project Bond
- グリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券。調達資金の充当対象となる単一又は複数のグリーンプロジェクトのキャッシュフローを原資として償還を行います。
例えば、専ら再生可能エネルギー発電事業を行うSPCが発行する、当該事業に必要な施設の整備や運営等を資金使途とし、当該事業の収益のみを原資として償還を行う債券がこれに該当します。 - 4Secured Green Bond
- 調達資金が、次のいずれかのグリーンプロジェクトのファイナンスもしくはリファイナンスのために 充当される担保付債券。
1. 特定の債券のみの裏付けとなっているグリーンプロジェクト(担保付グリーン資産担保ボンド); 又は
2. 当該グリーンプロジェクトが特定債券全体またはその一部の裏付けとなっている場合、あるいはなっていない場合の、発行体、オリジネーター、またはスポンサーのグリー ンプロジェクト (担保付標準グリーンボンド)。担保付標準グリーンボンドは、より大きな取引の特定のクラスまたはトランシェである場合もあります。
グリーンボンドのメリット
発行のメリット
- 1グリーンボンド発行に関する取組や投資家との対話を通じたサステナビリティ経営の高度化
- グリーンボンドに関する取組を通じて、企業等の組織内のサステナビリティに関する戦略立案と遂行、リスクマネジメント、ガバナンスの体制整備につながる可能性があります。これは、TCFD等のESG情報開示の要請に応える一助ともなります。また、こうした取組は、発行体の中長期的なESG評価の向上につながり、ひいては企業価値の向上に資すると考えられます。加えて、グリーンボンド発行を通じて獲得した投資家との対話は、自社のサステナビリティ経営をさらに高度化していくことにもつながり得ます。
- 2新たな投資家の獲得による資金調達基盤の強化、投資家との対話による調達の安定化
- グリーンボンドを発行することで、地球温暖化をはじめとした環境問題の解決に資する性質を有する投資対象を高く評価する投資家等の新しい投資家と関係を築くことができ、資金調達基盤の強化につながります。また、投資家との対話を通じ、互いの考え方や取組の理解が深まり、調達の安定化につながる可能性が考えられます。
- 3グリーンプロジェクト推進に関する積極性のアピールを通じた社会的な支持の獲得
- グリーンボンド発行により、グリーンプロジェクト推進に積極的であることをアピールでき、それを通じて社会的な支持の獲得につながります。
- 4比較的好条件での資金調達の可能性
- 市場の状況にも左右されるものの、グリーンボンドに対する投資家からの需要が大きい場合、比較的好条件で資金を調達できる可能性があります。また、例えば、新興の再生可能エネルギー事業者など、金融機関との関係が十分に構築できていない企業等は、希望した条件で融資等が受けられないことがあります。このような場合などに、自社が行うしっかりとした事業性を有する再生可能エネルギー事業などから得られるキャッシュフローを利払いや償還の原資とするグリーンボンド等を発行することにより、再生可能エネルギー事業などに関する事業性評価に精通した投資家等から、比較的好条件で資金を調達することにつながります。
投資のメリット
- 1ESG 投資の一つとしての投資
- グリーンボンドへの投資を行うことで、発行体のデフォルトがない限り安定的なキャッシュフローを得つつ、グリーンプロジェクトへ積極的に資金を供給し、それを支援していることをアピールすることができ、それを通じて社会的な支持の獲得につながります。
- 2投資を通じた投資利益と環境・社会面からのメリットの両立
- グリーンボンドへの投資を行うことで、債券投資による利益を得ながら、資金供給を通じ「環境・社会面からのメリット」に掲げるメリットの実現を支援し、持続可能な社会の実現に貢献できます。
- 3グリーンプロジェクトへの直接投資
- 「パリ協定」を踏まえ、今後世界が更なる温室効果ガス削減に取り組んでいく中で、再生可能エネルギー事業や省エネルギー事業等のグリーンプロジェクトには、大きな投資需要があると考えられます。このような事業に関連するグリーンボンドへ投資することにより、このような事業に直接関連した投資を行うことができます。
- 4リスクヘッジ
- グリーンボンドについては、通常の債券等と比較し、ボラティリティが低い可能性が指摘されています。そのため、価格変動リスクを抑制したい投資家にとって、有効な投資先の一つとなる場合も考えられます。また、グリーンボンドによる調達資金の投資対象が再生可能エネルギー事業や省エネルギー事業等である場合、「パリ協定」を踏まえて今後世界が温室効果ガスの長期大幅削減に取り組む中で発生することが予想されている投資家自らの移行リスクをヘッジする手段として有効となる可能性があります。
- 5エンゲージメントの実施
- グリーンボンドの場合、発行体から開示される環境改善効果等に関する非財務情報を分析・評価することにより、発行体のサステナビリティ/ESG戦略への理解が向上し、環境改善効果の持続性や環境・社会に対するネガティブな効果等を踏まえ、環境改善効果の有無及びそのインパクトの大きさについて効果的なエンゲージメントを実施することが容易となります。このような取組が、発行体のサステナビリティの向上と投資家にとっての中長期的な投資成果の向上という好循環につながり、ひいては、投資を通じた環境インパクトの実現、持続可能な社会の構築につながると考えられます。
環境・社会面からのメリット
- 1地球環境の保全への貢献
- グリーンプロジェクトへの民間資金の導入が拡大し、温室効果ガスの削減や自然資本の劣化防止に資します。
- 2グリーン投資に関する個人の啓発
- グリーン投資や、自らが預金・投資した資金の使途への個人の関心の向上につながり、経済全体の「グリーン化」に貢献します。
- 3グリーンプロジェクト推進を通じた社会・経済問題の解決への貢献
- グリーンプロジェクトの推進により、エネルギーコストの低減、地域活性化、災害時のレジリエンス向上に貢献します。