ポイント

債券やローンを通じて「節約できた額」を、環境又は社会へのコベネフィットを推進する地域レベルの取組支援に充当する事例

  • ACCIONA社は、40カ国において、人々の生活と地域社会にシステマティックかつリジェネラティブな(環境を再生するような)変化をもたらすインフラ・ソリューションを展開している。同社では、「グリーン・ファイナンシング・フレームワーク」は2019年に、「サステナビリティ・リンク・ファイナンシング・フレームワーク」は2021年(2022年更新)にそれぞれ発表。2023年には、これら2つのフレームワークにローカル・インパクト・イニシアチブを追加した「サステナブル・インパクト・ファイナンス・フレームワーク」を発表し、新しいアプローチを用いた4つの種類のの金融商品を導入した。2023年の「サステナブル・インパクト・ファイナンス・フレームワーク」は、グリーンを資金使途とする資金使途特定型と資金使途不特定型の両方の資金調達方法を含んでおり、新たに地域インパクトに関する仕組みも導入している。この地域インパクトの側面が、上記のいずれかの種類の資金調達方法と組み合わさる場合に、「デュアル・インパクト(二重のインパクト)」が創出される。
  • 例えば、「グリーンECAローン投資ファシリティ( Green ECA Loan Investing Facility )」(1,098豪ドル、2022年)では、 ACCIONAは、EUタクソノミー及び「サステナブル・インパクト・ファイナンス・フレームワーク」に沿った、プロジェクト等のポートフォリオに融資またはリファイナンスを行う。 クーポンの割引によって節約できた資金は、地域インパクト・イニシアチブの達成に向けられる。同ファシリティでは、節約できた資金は農家の150の脱炭素化計画の支援に充てられる。また、サステナビリティ・リンク・ローン Schuldscheindarlehen(325ユーロ、2022年)では、2025年まで毎年、設備投資の90%以上をEUタクソノミーと整合させるというSPTsを設定しており、達成した場合のクーポンの割引は、ACCIONAのグループのサプライチェーン全域で事業を展開する中小企業のバリューチェーン脱炭素化戦略の策定支援に充てる。

詳細

発行概要   発行年月 金額(百万USD) 償還期日 利率
1 2023/4 547.84 2030/4 3.75%
2 2023/3 96.877 2026/3 4.90%
3 2023/2 113.517 2025/2 1.20%
ACCIONA社は2016年に最初のグリーンボンドを発行し、2023年4月までの累計で3,796百万米ドルを発行している。
2017年から2023年8月15日までのグリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンの組成総額は7,600百万米ドルを超える。
表中の発行情報はグリーンボンド発行額の一部である。
サステナビリティ計画との関係
  • ACCIONA社の野心的な取組を支えるため、同社は、気候変動、循環経済、水管理、生物多様性などの主要分野における行動と目標のロードマップとなる5年間のサステナビリティ・マスタープラン(SMP)に基づく戦略を策定。
タイプ3:サステナビリティ・リンク金融商品
フレームワーク
  • 「グリーン・ファイナンシング・フレームワーク」は2019年に、「サステナビリティ・リンク・ファイナス・フレームワーク」は2021年(2022年更新)にそれぞれ発表された。「サステナブル・インパクト・ファイナンス・フレームワーク」は2023年6月に作成されたが、これは、これらの過去の2つのフレームワークに、ローカル・インパクト・イニシアチブを追加したものである。
  • 以下は、「サステナブル・インパクト・ファイナンス・フレームワーク」にある、タイプ3のサステナビリティ・リンク・商品(サステナビリティ・リンク・ローン及びサステナビリティ・リンク・ボンド)の概要である。
KPI

ACCIONAは、脱炭素化戦略を推進するため、サステナビリティ・リンク型の商品と連動し得る、以下の2つの企業レベルでのKPIを設定。

  • EUタクソノミー (EUの環境目標に貢献する経済活動の新しい分類法)と適合するCAPEXの割合
  • スコープ1とスコープ2の排出削減量(CO2-eq ton)
SPTs
  • 2025年までに、毎年、CAPEXの90%以上をEUタクソノミーと適合させる。EUタクソノミーに従い、全プロジェクトは「重大な損害を与えない(DNSH)」要件を満たし、社会セーフガードの最低基準を遵守していなければならない。
  • SBTiと整合性のある、スコープ1とスコープ2の排出削減(CO2-eq ton)。
ローン/債券の特徴
  • ACCIONAが毎年設定しているSPTsを達成しても、ACCIONA社は利益を得ない。しかし、商品の最終年に累積のSPTsが達成されなければ、ACCIONAは罰則として、目指している地域インパクトとのギャップを埋めるために資金提供し、第三者機関に貢献する。(理由:ACCIONA社は商品の発行・組成前からこれらの戦略/目標を掲げているためSPTsの達成は商品としての追加性がないため)
レポーティング
  • 企業レベルのKPI/SPTsとの遵守状況に関する情報を含む「サステナブルファイナンス報告書」を毎年発行する。
外部レビュー
  • DNVは、2023年6月にICMAのグリーンボンド原則とフレームワークの整合性を確認するSPOを発行した。検証(発行後)も予定している。
タイプ4:サステナビリティ・リンク金融商品+地域インパクトイニシアチブ
フレームワーク
  • 商品に追加性を持たせるため、地域レベルでの環境及び/又は社会インパクトを推進する地域インパクトイニチアチブを導入。
  • タイプ4の商品は、サステナビリティ・リンク商品(タイプ3)に地域インパクトイニシアチブを加えたものである。以下は、タイプ4の商品の概要である。
地域インパクト指標
(KPIs)
1
  • 近隣の女性や弱者への認証技術トレー二ングを支援した時間
2
  • 途上国の地方において、新たに電気へのアクセスができるようになった世帯数
3
  • ネットポジティブを目指す、自然に根差した解決策(NbS)として植林した木の本数
4
  • 中小企業向けの脱炭素計画の作成支援数
5
  • 早期採用プログラム(調達する鉄、セメント、コンクリートがゼロ/低炭素である件数)
6
  • 豪州クイーンズランドの農家の脱炭素計画作成数
企業/地域レベルのSPTs
  • 企業レベルのSPTsと地域レベルのSPTsの両方について、毎年設定。
  • 企業レベルのSPTsはタイプ3と同様である。地域レベルのSPTsは上記の地域インパクト指標から取引毎に選定される。
ローン/債券の特徴
  • 企業レベルのSPTs:毎年設定される企業レベルのSPTsを実現しても、ACCIONA社は利益を得ない。しかし、もしも商品の最終年に、累積のSPTsを達成しなければ、ACCIONA社は罰則として、目指している地域インパクトとのギャップを埋めるために第三者機関に資金提供し、貢献する。(理由:ACCIONA社は商品の発行・組成前からこれらの戦略/目標を掲げているためSPTsの達成は商品としての追加性がないため)
  • 地域レベルのSPTs:毎年設定されるSPTsが達成されれば、ACCIONA社は毎年クーポンの割引によるによる利益を得るが、その「節約コスト」は地域インパクト指標にある活動に向けられる。最終年において、もしも累積でのSPTsを達成できなければ、ACCIONA社は罰則として、目指している地域インパクトとのギャップを埋めるために第三者機関に資金提供し、貢献する。
レポーティング

企業レベル及び地域レベルのKPI/SPTsとの遵守状況に関する情報を含む「サステナブルファイナンス報告書」を毎年発行する。

外部レビュー

「サステナブルファイナンス報告書」に記載されている、企業レベル及び地域レベルのインパクト指標・目標、及び、コミットメントについて、第三者による検証を毎年実施する。

  • 出所:Environmental Finance(2023)Environmental Financeデータベース、ACCIONA (2023) “Sustainable Impact Financing Framework”、DNV(2023)“Second Party Opinion” 、 ACCIONA (2022) “ACCIONA Sustainable Finance Report 2022”、ACCIONAとのメール及びオンラインでのコミュニケーション(2023年10月)を基に環境省作成