ポイント

大手重建材メーカーの中で、初めてKPIsを3つ設定した事例

  • Cemex社は、セメント、生コン、骨材、都市開発ソリューションの4つのコアビジネスに注力するメキシコの大手重建材メーカー企業。同社によるサステナビリティ・リンク・ローンは、Environmental Finance社の2022年サステナビリティ・リンク・ローン・オブ・ザ・イヤー賞を獲得した。受賞理由として、同ローンは、Cemex社のサステナビリティ・リンク・ファイナンス・フレームワークに基づいており、このセクターで初めて3つのKPIsを使用したものとされた。

詳細

発行概要   実行年月 金額(百万USD) 融資期間 利率
1 2022/11 81 - -
2 2022/10 492 2025 -
3 2021/11 1,500 2026 -
4 2021/11 1,750 2026 -
5 2020/10 3,200 2025 -

同社では、2021年8月、サステナビリティ・リンク・ローン及びボンドを対象として「サステナビリティ・リンク・ファイナンス・フレームワーク」を策定した。また、2022年6月には、グリーンボンド、私募債、コマーシャルペーパー、ローン等の負債性資金調達に関する、「グリーン・ファイナンス・フレームワーク」も策定している。
以下は、このうち「サステナビリティ・リンク・ファイナンス・フレームワーク」の内容である。

サステナビリティ計画との関係

同社は、気候変動に関して以下の目標を掲げており、特に気候変動対策に関連するKPIsを「サステナビリティ・リンク・ファイナンス・フレームワーク」に含めている。

  • 気候変動対策:セメント製品1トン当たりのCO2純排出量(スコープ1)を2025年までに520kg、2030年までに475kg以下にする。また、セメント生産におけるクリーンエネルギーによる電力消費を2030年までに55%にする。
  • 生物多様性:全ての採石場について、第三者認証を取得した生物多様性行動計画を策定する。
  • 水:水不足地域にある施設の100%で水行動計画を実施する。
  • 循環経済:他の産業や当社のプロセスから排出される廃棄物由来の資源を 2,500 万トンに増加する。
SPTs
  • セメント製品1トン当たりのCO2純排出量を2025年までに520kg、2030年までに475kg未満にする。
  • セメントビジネスにおけるクリーンエネルギーによる電力消費を、2025年までに40%、2030年までに55%にする。
  • 代替燃料の比率を2025年に43%、2030年に50%に引き上げる。
KPIs
  • セメント製品1トンあたりのCO2純排出量(スコープ1)
  • セメントビジネスにおけるクリーンエネルギーによる電力消費量(スコープ2)
  • 化石燃料の代替燃料(例:廃棄物、都市ごみ、バイオマス残渣)のシェア
ローンの特性

SPTs未達成の場合、マージン調整が行われる。SPTs達成の場合、Cemex社は、貸し手から提供されるローンに適用される割引の形でマージン調整。価格調整は非累積的で、KPIは個別に測定される。

レポーティング

KPIs および SPTs について、毎年または情報の更新が必要な場合に実施する。本フレームワークの目的上、レポーティングは主にCemex社の統合報告書の中で行われる。

検証

基準日における KPIs とそれに対応する SPTs のパフォーマンスを、外部検証機関が検証し、その結果を、投資家とステークホルダーに透明性を提供する。

外部レビュー

上記フレームワークは、Sustainalytics社のSPOを取得。SPOでは、ローン市場協会(LMA)等発行のサステナビリティ・リンク・ローン原則(何年版かは不明)、及び、国際資本市場協会(ICMA)等発行のサステナビリティ・リンク・ボンド原則(何年版かは不明)との整合性があることが確認されている。

  • 出所: Environmental Finance (2022) “Sustainability-linked loan of the year: Cemex”, Environmental Finance (2022) “Environmental Finance Data” (2022年2月14日アクセス)、Cemex (2022) “Sustainability-Linked Finance Framework”を基に環境省作成