ポイント

SPTには、再エネによる発電量に加え、途上国におけるエネルギーアクセス改善を設定

  • Iberdrolaは、スペインに本拠を置く電力会社である。従業員約36,000人を擁し、スペイン、英国、米国、メキシコ、ブラジルを中心に、発電及び電力供給事業を展開している。主力事業は、売電・送電、再生可能エネルギーである。クリーン・エネルギーの推進に力を入れており、再生可能エネルギー源からの発電やスマート・グリッド(次世代送電網システム)の活用、効率的な電力貯蔵の普及等に積極的に取り組んでいる。マドリード証券取引所に上場している。
  • 同社は、2019年3月にサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)を調達した。期間は5年で、2026年3月まで延長する可能性がある。当社が2018年1月に調達したローンのスプレッドは27.5bpであったが、2019年3月に調達した今般のSLLでは最大23.5bpとなっており、2008年の金融危機前と同水準の有利な条件であった。
  • 当該SLLはマルチカレンシーのシンジケートローンで、21金融機関が参加しており、BBVAがリードして組成した。また、参加行の一つであるBNPパリバは、BBVAとともにサステナブル・コエージェントを務めている。
  • 当該SLLのSPTは、SDGsに沿った目標を2つ設定している。一つ目は、手頃な価格で信頼性の高い最新のエネルギーサービスへの普遍的なアクセスを保証することに関する目標で、二つ目は、新たな再生可能エネルギーの導入に関する目標である。

詳細

概要   実行年月 金額(百万USD) 融資期間 利率
1 2019/3 1700 2024/03(2026年3月まで延長の可能性あり 不明

グループ全体のグリーンローン(GL)およびSLLの実績としては、Iberdrolaが2017年2月にGLを調達したのを皮切りに、翌年2018年にはメキシコ子会社のIberdrola MexicoによるGL、米国子会社のAvangridによるSLLを実施する等、積極的にサステナブルファイナンスに取り組んでいる。

本ローン締結後の2019年5月に「Iberdrola Framework for Green Financing」を策定・公表。但し、同フレームワーク策定以前のグリーンな資金調達についても、本フレームワークで示されている方針と同様の考え方で実施されてきたとのことである。

サステナビリティ計画との関係

Iberdrolaは、2030年までに温室効果ガス排出量を対2007年比で50%削減する目標を設定しており、2050年までにカーボンニュートラルを達成する計画を定めている。また、2018年から2022年にかけて、再生可能エネルギー、スマートネットワーク、効率的なストレージ、革新的なソリューションへの投資を増やし、34,000万ユーロ以上を投資する予定である。

SPT
  • 指標(SPT)については、社会指標と環境指標の2つを設定している。
  • 前者は手頃な価格で信頼性の高い最新のエネルギーサービスへの普遍的なアクセスを保証するというSDGの7.1に関連する指標である。この指標は、同社の「Electricity for all」というプログラムにて設定した、2030年までに新興国・発展途上国の1,600万人に対し、環境面において持続可能な最新のエネルギー技術を用いて電力を供給するという目標に沿ったものとなっている。
  • 後者は、再生可能エネルギー発電に関連した指標で、新たな再生可能エネルギーの導入に関する目標であり、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーのシェアを大幅に増やすことを掲げているSDGsの7.2に沿ったものである。
レポーティング

当該フレームワークにおいて、各Green Financing Instrumentsについて、同社は毎年(または満期日)まで報告すると示唆しているが、グリーンボンドに関する開示や第三者レビューに関するルールは詳細があるものの、現段階ではGLやSLLに関しての記載は特段無い。「上場している金融商品(Green Financing instruments publicly traded)」については年次サステナビリティ報告書で公表するとの記載があり、ローンについては非公表としている可能性がある。

レビュー

Vigeo Eiris

  • Environmental Finance (2020) “Green and Sustainability Linked Loans Database”、 Iberdrola (2020) “Iberdrola Framework for Green Financing ”等を基に環境省作成