ポイント:新興国やフロンティア市場において、零細・中小企業や低・中所得者層への資本アクセスを促進する資金使途の事例

  • Symbiotics社は、スイスに本店を置くインパクト志向の金融機関。同社は、特別目的会社(SPV)(証券化等を目的として特別に設立したSPC、組合、信託等の総称)を活用し、新興国やフロンティア市場の小企業がグリーン、ソーシャル、サステナビリティ債券を利用できるよう支援している。 
  • 同社が2021年7月に発行したグリーンボンドは、Environmental Finance社のBond Awards 2022で、革新的な債券に送られる賞(Award for innovation)を受賞。他の多くのグリーンボンドよりも大きな付加価値があるという点が評価された。同グリーンボンドでは、調達資金は、SPVを通じて、インド18州の零細農家を支援している企業であるSumunnati社への現地通貨建て融資ファシリティに充当される。同融資ファシリティは、零細農家や農業関連企業による、食料安全保障、気候変動への耐性、GHG排出の管理の活動を支援する。インドの中規模プライベート・エクイティ企業がグリーンボンドにアクセスするためのコストはしばしば高くなるため、Symbiotics社は、同社のスマート農業戦略に適合する資金使途の特定、インパクトレポートの作成などの面でも、Sumunnati社を支援する。

詳細

発行概要   発行年月 金額(百万USD) 借り手 償還期日 利率
1 2021/10 15 Greenlight Planet Group
(アフリカ)
2 2021/8 10.1 EVN Finance
(ベトナム)
3 2021/7 4.6 Samummat
(インド)
2024/7 9.080%
2022年10月に発行した、中小企業向けのサステナビリティ・リンク・ファイナンス・フレームワークによると、Symbiotics社はこれまで上記の8回のグリーンボンドの他、ソーシャルボンドとサステナビリティボンドを計16回発行。Environmental Financeの受賞は、その中でも上記の2021年7月発行の460万米ドルの発行である。
サステナビリティ計画との関係
  • Symbiotics社は、2004年にサステナビリティ戦略を最初に策定。同戦略に沿って、Symbiotics社は、投資家に経済的および社会的リターンを得ながらも、「ピラミッドの底辺」にいる人々に資本へのアクセスを提供する機会を提供している。新興国やフロンティア市場において、零細・中小企業や低・中所得者層への資本アクセスの民主化を促進することで、貧困削減と持続可能なグローバリゼーションに貢献することを目的としている。
  • Environmental Finance社のBond Awards 2022で受賞した上記の債券は、下記の調達資金の中の1、2、6、10に関連すると考えられる。
フレームワーク

国際資本市場協会(ICMA)の2021年版グリーンボンド原則等に基づき、2022年10月、中小企業向けのサステナビリティ・リンク・ファイナンス・フレームワークを策定。

調達資金の使途
  • 次のグリーンプロジェクトへのローンを対象にしている:①再生可能エネルギー、②省エネ、③クリーンな輸送、④グリーンビルディング、⑤汚染の予防と管理、⑥自然資源と土地利用の環境的に持続可能な管理、⑦持続可能な水・廃水管理、⑧環境効率と循環型経済 - 適応する製品、生産技術、プロセス、⑨陸域および水域の生物多様性、⑩気候変動への適応
プロジェクト評価及び選定プロセス
  • サステナブルボンド委員会を設置。委員会は、3名の委員で構成され、その代表者は、(i)経営陣(常務取締役又は執行取締役)、(ii)リスク・コンプライアンス部門及び(iii)社内のESG又は影響の専門家のうちの1名で構成される。委員会は、サステナブルボンドの発行前に開催され、バスケットボンドの場合は、その都度開催。
  • 同委員会は、借り手の選択と、当該借り手に付与される融資に関連する適格社会プロジェクトまたは適格グリーンプロジェクトの基準を承認する責任を負う。
調達資金の管理
  • フレームワークでの記載なし(ただし上述の通り、調達資金は、SPVを通じてインドのSumunnati社に対する現地通貨建て融資ファシリティに使用)
レポーティング
  • 毎年一回、債券毎にレポーティングを発行する。
  • 資金使途レポーティングは次の項目を含む:①適格プロジェクトカテゴリー別の資金配分、②未充当金の額、③(可能であれば)資金が投入された国の内訳。インパクトレポーティングも年次で開示する。その際には、ICMAのインパクトレポーティングのフレームワークに沿うよう努める。
外部レビュー
  • 上記フレームワークにつては、DNVのSPOを取得。国際資本市場協会(ICMA)の2021年版グリーンボンド原則等との整合性について確認されている。
  • 債券又はローン毎に、外部検証を実施。
  • 出所: Environmental Finance(2023) Environmental Financeデータベース、 Symbiotics社のウェブサイト及び、Environmental Finance(2022) “Award for innovation - bond structure (green bond): Symbiotics”を基に環境省作成