ポイント:地方自治体向けのグリーンローンを資金使途とし、インパクトレポーティングで評価されたグリーンボンドの事例

  • KBNはノルウェーの国営金融機関であり、同国地方自治体向けに融資を行っている。地方のグリーンプロジェクトに対して優遇金利で融資するスキームがあり、グリーンボンドを発行して市場から調達した資金を活用。
  • インパクトレポ―ティグの内容・質が高く、金融メディアであるEnvironmental Finance社よりボンドアワード (2023)を受賞。融資した全グリーンプロジェクトに関するデータベースを有し、プロジェクトレベルの資金アロケーションとインパクトに関する情報を詳細に報告。インパクトについてはGHG削減排出量、再エネ発電量、エネルギー節約量、廃棄物処理増加量、水供給・水処理サービス増加人口、EUタクソノミー基準との整合比率などを情報開示。

詳細

発行概要   発行年月 金額(百万USD) 償還期日 利率
1 2022/12 371 2027/12 3.80%
2 2022/12 370 2027/12 3.80%
3 2022/11 195 2026/2 4.40%
4 2022/3 52 2025/2 0.765%
5 2022/2 133 2025/2 0.765%
KBNは2013年に第一回のグリーンボンドを発行して以来、2022年末までの間に累積で18回グリーンボンドを発行している。
サステナビリティ計画との関係

グリーンファイナンスに関して、2022年において同行の融資ポートフォリオの12%以上をグリーンローンとする、ノルウェ―自治体の35%以上がグリーンローンを受ける等の目標を設定している。また、自治体のグリーンプロジェクトにおける気候リスクを分析するためのモデルを開発。グリーンプロジェクトがEUタクソノミー基準に整合しているかの分析を行う等の取組を行っている。

フレームワーク

2013年にグリーンボンドフレームワークを策定。2022年までに、計約35億ドルのグリーンボンドを発行。同資金により、408のグリーンプロジェクトに融資を行っている(うち、2022年は68プロジェクト)。2021年3月にグリーンボンドフレームワークの最新版を国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則に基づき策定。

調達資金の使途
  • ICMAのグリーンボンド原則のプロジェクトカテゴリーをベースとしつつ、自ら「グリーンローンのための基準ドキュメント」を作成し、適格基準を記載。
  • 同ドキュメントは同行のグリーン専門家委員会において毎年見直される。
  • 今後、同ドキュメントに記載される基準をEUタクソノミー基準と整合性があるものに調整していく。そして、その整合度合いについて情報開示をする。
プロジェクト評価及び選定プロセス
  • プロジェクトの選定にあたり、同行担当者の見解に対して気候アドバイザーがレビューを行ない、最終的に気候検査役(コントローラー)が判断を行う。
  • プロジェクト選定プロセスについては、毎年実施される内部監査の一環でレビューが行われる。
調達資金の管理
  • プロジェクトレベルで資金管理を行う。具体的には、「グリーンプロジェクト登録」というシステムのもとで追跡される。
  • 未充当金がある場合は、必要に応じて、同行の一時的運用に関する政策のもと、国、地方政府、あるいは国際機関の発行する債券への投資が行われる。
レポーティング
  • 資金使途とインパクトに関するレポーティングを作成し、毎年開示する。
  • 資金使途については、プロジェクト数、未充当金の額とそのシェア、リファイナンス比率などを開示。
  • インパクトに関しては、プロジェクト名、借り手、事業概要、事業期間、全事業コスト、貸付額、残高、同行融資比率、プロジェクトタイプに応じた定量的インパクト(GHG削減排出量、再エネ発電量、エネルギー節約量、廃棄物処理増加量、水供給・水処理サービス増加人口等)やEUタクソノミー基準との整合比率などを開示。また、同社のウェブサイトに、融資しているグリーンプロジェクトリストを四半期ごとに更新し情報開示する。
外部レビュー
  • 2021年3月、CICEROより上記フレームワークに対するSPOを取得。ICMAのグリーンボンド原則等との整合性が確認されている。
  • 出所: Environmental Finance(2023) Environmental Financeデータベース、 Environmental Finance (2023) “Environmental Finance‘s Bond Awards 2021”、KBN(2021) “Green Bond Framework”、CICERO(2021)“Second Party Opinion” を基に環境省作成