ポイント:資金使途が多様な事例

  • ヘッセ州は人口6.4百万人で、フランクフルトなどを擁し金融・商業が産業の中心。2015年に2050年カーボンニュートラルを宣言し、2017年に2025年までの気候変動対策計画を策定。以降同計画に基づき140の対策を実施中。これら資金需要の一部についてグリーンボンドを活用している。
  • 2021年に第1回、2023年に第2回目のグリーンボンドを発行。両グリーンボンドの資金使途カテゴリーは共通しており、エネルギー関連以外では、洪水対策、森林保全、有機農業および自然保護などが対象となっている。同カテゴリーはEUの環境目的に沿ったものとしている。

詳細

発行概要   発行年月 金額(百万USD) 償還期日 利率
1 2023/7 1,090.59 2033/7 2.875%
2 2021/6 730.2 2031 0.01%
初回グリーンボンドは2018~2020年までに実施した20プロジェクト、第2回目は2021~2022年に実施した30プロジェクト(うち14件が新規)のリファイナンスを行う。2回のグリーンボンド総発行額のうち約7割が環境に配慮したな公共交通に資金配分予定となっている。
サステナビリティ計画との関係
  • 2015年に2050年カーボンニュートラルを宣言した後、2021年にこれを連邦政府にあわせて2045年に前倒し、Hassen Climate Actを制定。2017年に気候変動対策計画作成したが、2023年に新たに57の対策を追加した気候計画を策定した。
  • 2019年に国連の責任ある投資原則(UN PRI)に州政府として参加(州の年金運用関連)。2020年にサステナビリティに関する22の基本原則を策定し、定期的にその実施状況を公表している。SDGsのなかの13の目標について、州として2030年までの達成指標と目標値を設定している。
フレームワーク

2021年4月に策定されたグリーンボンドフレームワークを2023年に更新している。ICMAのグリーンボンド原則に則したものとしているともに、国連SDGsとも関連付けを行っている。

調達資金の使途
  • 対象となる活動は、環境に配慮した公共交通、再植林や森林保全、公共建築物における省エネ・再エネの導入、有機農業の促進、洪水対策等適応策、水資源の保全・回復など。尚、原子力、化石燃料としての石油と石炭、シェールガスは除外されている。
  • リファイナンスのルックバック期間については、2021年のグリーンボンドでは過去3年間、2023年のグリーンボンドでは過去2年間を対象としている。
プロジェクト評価及び選定プロセス
  • プロジェクトの選定にあたり、省横断のワーキンググループを設置し、債務管理部局がプロジェクトリストを作成。ICMAの適格区分との整合性、国連SDDsへの貢献度、EUの環境目的に沿ったものであることなどを確認。
  • 資金配分とそのモニタリングは州財政予算計画プロセスに沿って行われる。
調達資金の管理
  • 債券発行前に対象とするプロジェクトと支出額を確定しておく。ボンド総額をやや上回る金額を設定。
  • 債券発行の1年以内にすべての資金配分を行う。未配分資金が生ずる場合は、州のガイドラインに基づいて管理する。
レポーティング
  • 資金使途とインパクトに関するレポーティングを作成し、毎年開示する。資金使途については、プロジェクトリスト、各プロジェクトの概要、資金配分額などを開示。
  • インパクトに関しては対象事業区分毎にインパクト指標を設定し、これに基づき公表、また必要に応じて更新する。例えば、森林保全のインパクト指標では、森林保全に従事した森林オーナーや材木業者の申請件数や州政府が森林管理を行った単位面積当たりの資金配分額、有機農業のインパクト指標では、有機農法を新たに導入した面積や草地管理を重点的に行った面積、水資源の保全・回復のインパクト指標は、河川・水辺の機能向上活動の延長距離など。
外部レビュー
  • 2023年6月、ISS ESGより上記フレームワークに対するSPOを取得。ICMAのグリーンボンド原則等との整合性が確認されている。
  • 出所: Environmental Finance(2023) Environmental Financeデータベース、State of Hesse (2023) “Green Bond Framework”、”Green Bond Investor presentation”、 ISS ESG (2023) “Second Party Opinion” を基に環境省作成