2020年4月、Climate Bonds Initiative(CBI)は、グリーンボンドを発行した企業の財務担当を調査対象としてグリーンボンド発行のメリットや課題等を分析したレポートを発表しました。(英語本文)。
以下は、同レポートの概要です。
調査方法
- 調査対象機関:CBIが所有するグリーンボンド発行データベースに基づき、発行した機関の国、産業、格付け、発行額等バランスを考慮して143機関を選出。このうち86機関から回答があった(欧州51、北米11、アジア10、その他14機関。日本は鉄道建設・運輸施設整備支援機構の1機関)。
- 調査時期:2019年5月~11月。
- 調査方法:質問状および電話インタビュー
主たる結論
- グリーンボンド発行は当該企業の将来の低炭素・脱炭素にむけたビジネスモデルを見直し、それにともなうITシステムや業務の透明性等を強化する良い機会となる。
- グリーンボンドの発行を通じて責任投資家コミュニティへのアクセスを可能にし、当該企業の投資家基盤を広げるとともに、責任投資家とのエンゲージメントの機会が増える。
- グリーンボンドの発行を通じて当該企業が「グリーン」へのコミットメントを強化するとともに、資本市場関係者にそのコミットメントを目に見える形で示すことができる。
- グリーンボンドを発行する際に、グリーンボンドフレームワークの作成、報告要求事項対応、適格となるグリーンプロジェクトの特定等が必要となり、これにともない社内の関係部署との連携が強化される。また、そのプロセスを通じてサステナビリティに関する理解向上とコミットメントを高めることができる。
- グリーンボンド発行後においてグリーン企業というイメージが高まり、他企業からグリーンプロジェクトのオファーが得られるケース、あるいは、グリーンボンド発行が増加することで銀行がグリーンプロジェクトの資金ニーズを確信し、グリーンローンのビジネスを拡大する動きにつながるケースがある。
- グリーンの定義やレポーティングの標準化などを促進するべきとの意見が多い(約6割)。一方で、あまり厳格な標準化は市場拡大に影響があるという意見もある。
その他主な質問項目と回答結果
質問事項 | 主な結果 | その他回答コメント | |
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1 | グリーンボンド(GB)発行の判断に影響を及ぼす要素はなにか? | 発行企業の理事会、非雇用者、投資家、の順。 | 金融当局の影響はあまりない。 |
2 | 過去にGBを発行しなかった理由はなにか? | 当時のGB市場が十分発展していないとの認識、GBに対する理解不足、投資家の需要不足、の順。 | 追加コストによりGB発行をためらったものの、実際発行してみると様々なメリットが認識された。 |
3 | GB組成段階でガイダンスを受けた機関はどこか? | 投資銀行の債権市場デスク、セカンドオピニオン提供会社、コンサルタント、の順 | GB発行額が小さい企業はコンサルタントが比較的多い。 |
4 | GB発行にあたり投資家から最も強く求められた情報はなにか? | 資金使途の内容、GB発行後の情報開示、GBフレームワーク、の順。 | |
5 | GB発行にともなう追加コストの捉えかたは? | 他のベネフィットがあるのでGB発行は意味ある(58%)、追加コストの金額は小さく影響ない(38%)、結果としてファンディングコストが低かったので意味あった(4%)。 | |
6 | 通常の社債と比較してファンディングコストはどうか? | ほぼ同じ(48%)、GBのほうが低い(42%)。 | 発行額が大きく、また長年GBを発行している企業の場合は、GBのほうがファンディングコストは低い傾向。 |