「移行計画」とは、TCFDが2021年10月に公表した「指標、目標および移行計画に関するガイダンス」で打ち出した概念で、「低炭素経済への移行をサポートする一連の目標や行動を示す、GHG 排出量の削減などの行動を含む組織の全体的な事業戦略の一側面」と定義される。最近では、サステナブルファイナンスにおいて、脱炭素経済への移行を支援するために、企業のネットゼロに関するコミットメントの信頼性を確保する「移行計画」の重要性が広く認識されており、OECDのGuidance on Transition FinanceやG20 Sustainable Finance Working Groupによる 2022 G20 Sustainable Finance Reportにおいてもその重要性が指摘されている。
こうした流れの中、移行計画に関する開示の有用性や比較可能性を高めるために、各種の開示フレームワークにおいても、移行計画に関する開示について明記される動きが広がっている。
本資料では、以下の3つの気候変動開示の主要なフレームワークにおいて、移行計画に関してどのような内容が開示要請(あるいは開示推奨)されているかを整理するとともに、各フレームワークの内容の比較を試みている。
- TCFD提言
- ISSBが2023年6月に公表したIFRS S2号「気候関連開示」
- 欧州委員会が2023年8月に採択したESRS E1「気候変動」