サステナビリティ・リンク・ローン原則
(Sustainability Linked Loan Principles: SLLP)

サステナビリティ・リンク・ローン原則(SLLP)は、サステナビリティ・リンク・ローン借入に関する自主的ガイドラインです。SLLPは、サステナビリティ・リンク・ローン商品の開発を促進し、誠実性を維持するため、シンジケートローン市場で活動している主要な金融機関の代表から構成される作業部会によって2019年に策定され、その後逐次改訂が行われてきています。SLLPは、ローン・マーケット・アソシエーション(LMA)、アジア太平洋ローン・マーケット・アソシエーション(APLMA)、ローン・シンジケーション&トレーディング・アソシエーション(LSTA)が発行元となっています。

2022年9月現在の最新版はSLLP(2022年版)(英語)新しいタブまたはウィンドウで開くです。

なお、Q&Aを中心としたサステナビリティ・リンク・ローン原則に関するガイダンス(Guidance on Sustainability Linked Loan Principles)(英語)新しいタブまたはウィンドウで開くも公表しています。

SLLP(2022年版)は、次の5つの核となる要素で構成されています。以下は、その概要です。

1. 重要業績評価指標(KPIs)の選定

  • SLL市場の信頼は、KPIsの選定次第である。
  • KPIs は以下のようにあるべき
    • 借り手のビジネス全体にとって関連性があり、中核的かつ重要(マテリアル)であり、借り手の現在や将来の事業運営にとって高い戦略的意義を有すること
    • 一貫した方法論に基づく測定又は定量化が可能であること
    • ベンチマークが可能であること。つまり、SPTsの野心性を評価するために、外部指標や定義を可能な限り活用すること
  • 借り手はKPIの適用範囲と共にその明確な定義を提示し、算出手法、ベースラインの定義を明らかにするほか、可能な場合は業界標準と照らし合わせてKPIをベンチマークするべき

2. サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)の測定

  • SPTs は真摯かつ誠実に設定されなければならず、発行体は SPTs の達成に重大な影響を及ぼし得る戦略的な情報を開示すべき
  • SPTs は野心的であるべきである。野心的であるとは、
    • それぞれのKPIにおける重要な改善を表し、「BAU:Business as Usual(当該プロジェクトを実施しない場合、もしくは成り行きの場合)」の軌跡を超えるものであるべきである
    • 可能な場合においては、ベンチマークや外部参照値と比較可能であるべきである
    • 借り手の全体的なサステナビリティ/ESG戦略と整合しているべきである
    • ローン開始前又は開始時にあらかじめ定められた時間軸に基づいて決定されるべきである
  • 実際の目標設定の作業は、①借り手自身の長期的パフォーマンス(可能な場合は、最低3年間)と比較すべきであり、さらに②同業他社のパフォーマンス、➂科学的根拠に基づくシナリオ分析や絶対値などといった評価基準を用い、複数の観点の組み合わせに基づきベンチマークされるべき
  • SPTSに関する情報開示については、目標達成に関するタイムライン、KPIの改善を示すために選定された検証済みのベースラインや科学に基づく基準点、ならびにそれらを利用する根拠、ベースラインの再計算や形式的な調整方針(適宜)、SPTsの達成手段、その他直接的なコントロールの及ばない重要な要因などについて明示すべき
  • セカンド・パーティー・オピニオン等の外部レビューは奨励される(契約前は選定されたKPIの妥当性、頑健性及び信頼性、提示されたSPTsの根拠及び野心度、選定されたベンチマークとベースラインの妥当性と信頼性、ならびに該当する場合はシナリオ分析に基づく達成に向けた戦略の信頼性について評価、契約後は周辺環境、KPIの方法論、SPTsの測定に大きな変更が生じた場合の外部レビューの活用)。外部レビューを実施しない場合、内部の専門的知識を示す又は開発することを強く推奨

3. ローンの特性

  • SLLの特徴は、選定されたSPTs が達成されたか否かにより、貸付条件等にリンクしていること
  • 例えば、あらかじめ合意されたSPTsがKPIsによる評価によって達成された場合に貸付金利が下げられる

4. レポーティング

  • 借り手は、SPTsのパフォーマンスをモニタリングし、かつ、野心度について判断するため、可能であれば、少なくとも年一回、SPTsの達成状況に関する情報を貸し手に提供すべき
  • 借り手は、SPTs関連の情報を一般開示が奨励されるべき
  • ただし、これが難しい場合には、借り手はSPTsに関する情報を一般に開示せずに、貸し手にのみ報告する、または開示内容を簡素化することができる
  • 開示する場合、当該情報を借り手のサステナビリティレポート、統合報告書等に含めること又はウェブサイト等に掲載することが考えられる

5. 検証

  • 借り手は、各KPIsのSPTsに対するパフォーマンスレベルについて、独立した外部機関による検証を少なくとも年1回以上受けなければならない
  • 貸し手は、提供された情報に基づき各KPIのSPTsのパフォーマンスについて評価すること
  • 外部検証の結果は、適宜、一般に開示すべきと推奨する
  • セカンド・パーティー・オピニオンのような、推奨されている契約前の外部レビューとは異なり、契約後の検証はサステナビリティ・リンク・ローンにおいて必須の要素である

また、付録として、環境、社会、ガバナスの観点からKPIsが例示されています。

参考までにSLLPの日本語版(2019年版)PDFデータはこちらをご覧ください。

参考文献

  • LMA, APLMA, LSTA (2022) Sustainability Linked Loan Principles
  • LMA, APLMA, LSTA (2021) Guidance on Sustainability Linked Loan Principles
  • LMA, APLMA, LSTA (2019) 「サステナビリティ・リンク・ローン原則(環境省仮訳)」