サステナビリティ・リンク・ローン原則
(Sustainability Linked Loan Principles: SLLP)

サステナビリティ・リンク・ローン原則(SLLP)は、サステナビリティ・リンク・ローン借入に関する自主的ガイドラインです。SLLPは、シンジケートローン市場で活動している主要な金融機関の代表から構成される作業部会によって2019年に策定され、その後逐次改訂が行われてきています。SLLPは、ローン・マーケット・アソシエーション(LMA)、アジア太平洋ローン・マーケット・アソシエーション(APLMA)、ローン・シンジケーション&トレーディング・アソシエーション(LSTA)が発行元となっています。

最新版SLLP(2025年版)(英語)新しいタブまたはウィンドウで開くは、次の5つの核となる要素で構成されています。以下は、その概要です。

なお、Q&Aを中心としたサステナビリティ・リンク・ローン原則に関するガイダンス(2025年版)(英語)新しいタブまたはウィンドウで開くも作成されています。

1. 重要業績評価指標(KPIs)の選定

  • サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)の商品の信頼は、KPIsの選択に懸かっている。
  • KPIs は以下でなければならない。
    • 借り手のビジネス全体に関連性があり、中核的でマテリアルであり、並びに借り手の現在及び/又は将来的な事業において戦略的に大きな意義があるもの;
    • 借り手のサステナビリティ戦略全体と整合していていること;
    • 一貫した方法論に基づき測定可能、又は定量化が可能なもの;
    • 実現可能な場合には、外部検証が可能であること;
    • ベンチマーク化が可能であること(すなわち、SPTsの野心性を評価するために、可能な場合は外部参照情報や定義を活用する)
  • 借り手はKPI(s)の明確な定義を提示し、適用対象範囲やパラメーター、及び計算の方法論、ベースラインの定義を含めなければならない。また、可能な場合は業界標準及び/又は同業他社とベンチマーク化がなされなければならない。

2. サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)の設定

  • SPTs は真摯かつ誠実に設定されなければならない。
  • ローンの期間中を通じて、KPI 毎に年次のSPT を設定すべきである。これが適切でない理由として強い根拠が提供される場合、また、当該取引とKPIの性質を十分に考慮する場合には、SPTs の年次の頻度の例外について借り手と貸し手の間で合意することができる。
  • 借り手は、可能であれば、かつ、競争上の検討事項や守秘義務に配慮した上で、SPTsの達成に決定的な影響を与える戦略的な情報を貸し手に開示すべきである。
  • SPTs は野心的でなければならない。すなわち、
    • 各KPIにおける重要な改善を表し、BAU(成り行きの場合)シナリオ及び規制上要求される目標の両方を超えるものであり;
    • 実現可能な場合には、借り手の地域および国の状況を考慮したベンチマークや外部参照値と比較し;
    • 借り手の全体的なサステナビリティ戦略、かつ該当する場合には事業戦略と整合し;及び
    • ローン組成前又は(組成時)にあらかじめ設定された時間軸に基づいて決定されること。
  • SPTsの目標設定は、以下の3つのベンチマークのうち複数の観点の組み合わせに基づくべきである。
    • 借り手自身の最低でも過去3年分のパフォーマンス;及び/又は
    • 借り手の同業他社のパフォーマンス、若しくは現在の業界やセクターの基準と比較した相対的位置付け;及び/又は
    • 科学的根拠に基づくシナリオ分析もしくは絶対値、政府・地域・国際的な目標との比較等
  • 目標設定に関して貸し手に情報を提供する際には、以下について明確に言及するべきである
    • 目標達成に関するタイムライン;
    • 関連する場合には、KPIsの改善を示すために選定された検証済みのベースラインや参照値、ならびにそれらを利用する根拠;
    • 関連する場合には、どのような場合にベースラインの再計算や試算の調整、及び/又は KPIs及びその後のSPTsの再計算が行われるか;
    • 実現可能な場合には、及び、競争や守秘義務を考慮した上で、借り手がどのようにSPTsを達成するのか;並びに、
    • SPTsの達成に影響を及ぼし得る、借り手が直接的に管理することができない他の重要な要因。
  • 適切であると認められる場合、借り手は、ローン実施前に、外部レビュー機関から意見を求めるべきである。契約前は、外部レビュー機関は、選定されたKPIの関連性・頑健性・信頼性、SPTsの根拠及び野心度、ベンチマークとベースラインの関連性と信頼性等について、評価すべきである。契約後は、対象範囲、KPIの方法論、SPT(s)の設定に重大な変更があった場合、借り手はこれらの変更内容について外部レビュー機関に評価を依頼してもよい。
  • 外部からのインプットを求めない場合、借り手は、組織内部の専門知識を証明又は確立し、文書化すべきである。

3. ローンの特性

  • SLLの特徴は、KPI(s)が事前に設定したSPT(s)に達するか否か次第で、ローンの財務的及び/又は構造的特性が変化し得る。
  • 最も一般的な例は、ローン契約においてマージンが変動するケースである。

4. レポーティング

  • 借り手は、少なくとも年1回、並びにSLLの財務的及び/又は構造的特性の調整につながり得るSPTsに対するパフォーマンスの評価に関連する場合は随時、以下の情報を貸し手に提供しなければならない。
    • KPI(s)のパフォーマンスをモニタリングするために十分な最新情報
    • SPTsに対するパフォーマンス及びローンの特性に与える影響等を概説した、サステナビリティ確認書(検証報告書を添付)
  • 借り手は、SPTs関連の情報を一般に開示すべきである。その際、当該情報は、借り手の統合報告書又はサステナビリティレポートなど、開示されている報告書に含めるべきである。ただし、そのような開示は常に実現可能ではないかもしれず、適切な場合は、借り手はSPTsに関する情報を一般に開示せず、貸し手のみと共有することができる。

5. 検証

  • 借り手は、最後のSPTのトリガー事象判定日に達した後まで、SSLの財務的及び/又は構造的特性の調整につながり得るSPTsに対するパフォーマンス評価に関する際は随時、各KPIのパフォーマンス水準について、独立した外部検証を取得しなければならない。
  • 当該情報が、借り手の(公的な)年次報告書または規制当局への提出書類の一部として既に検証されている場合には、SLLP対応のために再度検証する必要はない。
  • SPTsに対するパフォーマンスの検証は、適時に貸し手と共有されなければならず、適切な場合は、一般に開示されなければならない。
  • セカンド・パーティー・オピニオンのような、推奨される契約前の外部レビューとは異なり、契約後の検証はSLLに必須の要素である。

参考文献

  • LMA, APLMA, LSTA (2025) Sustainability-Linked Loan Principles
  • LMA, APLMA, LSTA (2025) Guidance on Sustainability-Linked Loan Principles
  • LMA, APLMA, LSTA (2024) External Review Guidance for Green, Social, and Sustainability-Linked Loans