サステナビリティ目標とSPTsとの関係のモデルケース

グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2024年版では、サステナビリティ・リンク・ボンドの組成にあたって必要となるSPTsの設定方法について、対象企業におけるサステナビリティ目標とSPTsの関係のモデルケースを紹介しています。

CASE 1
製造業を営む企業Aは事業戦略及び中期経営計画の中で、環境への配慮を事業課題及び事業リスク両面から重要課題と位置付けている。1.5℃目標達成に向けた削減目標を設定し、SBT(Science Based Targets)認定を取得。SBTに基づき事前に設定した自社の運営及び自社製品の製造に伴う温室効果ガスの削減目標をSPTsとした。
CASE 2
食品製造業を営む企業Bは事業戦略上、人の健康と持続可能な食を重要課題と位置付けている。そのため環境、社会に配慮した事業活動を行う企業を対象とした民間の認証制度による認証を得た商品の売上構成比率を一定以上とすること及びESG要因の評価をSPTsとして設定した。
CASE 3
小売業を営む企業Cは企業成長と社会の発展を両立させるサステナブル経営のビジョンを掲げている。低炭素社会の実現に向けてCO2排出量の削減を積極的に行ってきており、その取組の一環としてRE100に加盟した。RE100では事業運営に必要なエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うことが求められており、その達成をSPTsとした。
  • このほか具体的なSPTsの設定事例については、グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2024年版付属書4 KPIsの例<サステナビリティ目標とSPTsとの関係のモデルケース>を参照してください。
  • モデルケースはあくまで例示であり、SPTsはこれらに限定されるものではございません。

サステナビリティ・リンク・ボンド発行事例

MODEL1 再生可能エネルギーの利用及び耐火木造建築に関する取組み ヒューリック株式会社

  • 令和2年度サステナビリティ・リンク・ローン等モデル創出事業の公募にて選定されました。
  • 2020年8月に、環境省及び確認機関より適合性を確認の上、発行前報告書が公表されました。

当社戦略との整合性

当社は、「変革」と「スピード」をベースに、環境変化に柔軟に対応した進化を通じて、持続的な企業価値向上を実現するグループを10年後の目指す姿としている。そのためには、「成長性」、「安全性」、「収益性」、「生産性(効率性)」を高次元でバランスしつつ、圧倒的なスピードによるダイナミックな転換を図り、さらなる成長を実現することを基本方針として掲げている。本基本方針の下、不動産賃貸事業をコア事業とし、更に時代のニーズに即した成長分野への積極的な取り組みも推進している。その一環として3Kビジネス(高齢者・健康、観光、環境)に取り組んでおり、環境課題の解決に資する事業を事業領域拡大における重要な取り組みの一つとしている。
当社は、従前より財務目標だけでなく、非財務目標も明確化しているほか、環境長期ビジョンとして、2050年の理想の社会の姿を「低炭素社会」と「循環型社会」として、環境配慮経営を推進することを挙げている。また2050年に至るロードマップとして、2030年までに2013年比45%のCO2排出量の削減を目指すことを掲げている。
当社が今般設定したSPTsは、このような積極的な環境問題への取り組みの中でも特に力を入れている、再生可能エネルギー利用の取り組みと耐火木造建築への取り組みに関するものである。

SPTs概要

①子会社を含むグループの使用電力をカバーする太陽光発電設備を開発することで、2025年までに100%再生可能エネルギー化(RE100達成)を目指す

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ヒューリック株式会社ウェブサイトより引用

②当社の注力エリアである銀座において、日本初となる耐火木造12階建ての商業施設の開発(木造と鉄骨造とを組み合わせたハイブリッド構造)を行う

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ヒューリック株式会社ウェブサイトより引用

環境改善効果
商業施設
所在地
銀座8丁目(JR新橋駅徒歩4分)
構造
木造+鉄骨造のハイブリッド構造
規模
地上12階、地下1階
敷地面積
251.98㎡(予定)
延床面積
2,456.54㎡(予定)
設計施工
竹中工務店
外装デザイン監修
隈研吾建築都市設計事務所
竣工
2021年10月(予定)

【発行条件と連動するSPTs】

①2025年までにRE100の達成
②2025年までに銀座8丁目開発計画における日本初の耐火木造12階建て商業施設の竣工

※2026年8月の判定時点において上記目標のいずれかが未達の場合、2026年10月利払いより+0.10%のクーポンステップアップを行う。

【発行条件と連動せず、2026年以降モニタリング対象となるSPTs】

③2025年に達成したSPTsはその後償還期限まで維持する。維持状況について第三者評価機関(JCR)から、限定的検証報告書を毎年8月に取得、開示する。ただし、発行時点で予見し得ない状況によりRE100の維持が一時的に困難となった場合、上記検証報告書を通じ、維持困難となった状況の説明と今後の改善策について投資家に開示することとする。

確認機関

株式会社日本格付研究所
イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社

発行前報告書

発行前報告書PDFデータ

MODEL2 再生可能エネルギーの利用及びゼロカーボンシティ支援に関する取組み 芙蓉総合リース株式会社 icon

  • 令和2年度サステナビリティ・リンク・ローン等モデル創出事業の公募にて選定されました。
  • 2020年10月に、環境省及び確認機関より適合性を確認の上、発行前報告書が公表されました。

当社戦略との整合性

当社は、共有価値の創造(以下、「CSV」という。)を経営の軸に据え、事業を通じた社会課題の解決を推進している。中期経営計画「Frontier Expansion 2021」(2017年度~2021年度)では、特に注力する6つの「戦略分野」を設定し、各分野でSDGsに代表される社会課題の解決を目指している。
例えば「エネルギー・環境」では、「RE100」への参加を通じた当社グループ事業消費電力の再生可能エネルギー化に加え、ビジネスを通じた脱炭素社会推進への3つの貢献を掲げている。
その1つは「再生可能エネルギー関連インフラの普及推進」であり、「芙蓉 再エネ100宣言・サポートプログラム」や「芙蓉 ゼロカーボンシティ・サポートプログラム」といった、特色のある優遇ファイナンスプログラムを立ち上げている。
また、当社は、SDGs等をもとに6つの「重要な取り組み課題(マテリアリティ)」を特定し、「気候変動問題と再生可能エネルギーへの対応」をその1つに位置づけている。
そして、同課題に係る取り組みテーマとして、「事業消費電力の再生可能エネルギー化」や、「金融サービス提供を通じた再生可能エネルギー普及等の支援」等を設定している。
本債券で設定されたSPTsは、当社の中期経営計画及びマテリアリティに係る目標である。

SPTs概要

①2024 年7月までにグループ消費電力の再生可能エネルギー使用率を50%以上とする。

当社は、グループの事業消費電力の再生可能エネルギー率を2030年までに50%、2050年までに100%にするという目標を掲げているが、本債券のSPT①において当該中期目標達成を「2024年7月までに再生可能エネルギー50%」に前倒しした。目標達成のため、まず当社グループ全体の電力消費量の3割超を占めている本社の消費電力を全て再生可能エネルギーに転換する。一方、本社を含め、同社グループの電力消費地の多くはオフィスビル等のテナントである。一般的に「テナントの再エネ化」は難しいとされているが、目標達成のためにはテナントの対策が必要不可欠である。そのため当社は、「テナントの再エネ化」を実現するための2 つの特徴(特定の建物に限定されない汎用性、トラッキング付非化石証書の活用による拡張性)を備えた新たな手法を取り入れ、ビルオーナーの場合と比較して自ら取り組むことが難しいテナントにおける新たな選択肢を創出することで、SPTs達成を目指す。

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芙蓉総合リース株式会社ウェブサイトより引用

②2024年7月までに「芙蓉 再エネ100宣言・サポートプログラム」及び「芙蓉 ゼロカーボンシティ・サポートプログラム」の累計取扱額を50億円以上とする。

当社はSPT②として、2019年10月に開始した「芙蓉再エネ100宣言・サポートプログラム」及び2020年10 月に開始した「芙蓉ゼロカーボンシティ・サポートプログラム」の両プログラムにおける累計取扱額を、2024年までに50億円以上とするという目標を設定している。「芙蓉再エネ100宣言・サポートプログラム」は、RE100参加企業及び再エネ100宣言RE Action参加企業・団体を対象に、新たに再生可能エネルギー設備・省エネルギー機器・その他環境改善に資する機器を導入する際に優遇するファイナンスプログラムである。新たに開始する「芙蓉ゼロカーボンシティ・サポートプログラム」は、環境省が推進する「ゼロカーボンシティ」域内での再エネ・省エネ化を推進することを目的としている。具体的には、企業や自治体等がゼロカーボンシティの域内において対象となる機器を導入する際に、優遇したファイナンスを行う。さらに、プログラムを活用した契約より契約額の0.1%相当額を寄付金として拠出し、芙蓉総合リースが同額の上乗せ(マッチング)を行うことで、契約額の計0.2%相当額を自治体や公益財団法人、NPO 等の団体に寄付する取り組みとなっている。

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芙蓉総合リース株式会社ウェブサイトより引用

【発行条件と連動するSPTs】

① 2024年7月までにグループ消費電力の再生可能エネルギー使用率を50%以上とする。
② 2024年7月までに「芙蓉 再エネ100 宣言・サポートプログラム」及び「芙蓉 ゼロカーボンシティ・サポートプログラム」の累計取扱額を50億円以上とする。

※2024 年7 月の判定時点においてSPTsのいずれかが未達の場合、2024年12月利払いより+0.10%(予定)のクーポンステップアップを行う。

【発行条件と連動せず、2025 年以降モニタリング対象となるSPTs】

③ 2024年7月までに達成したSPTs はその後償還期限まで維持する。

※維持状況について、第三者評価機関から限定的検証報告書を毎年10月に取得し開示する。SPTs達成後、期中において予期しえない状況により、再生可能エネルギー使用率50%以上の維持が一時的に困難になった場合、上記検証報告を通じ、維持困難となった状況の説明と今後の改善策について投資家に開示する。

確認機関

株式会社日本格付研究所
イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社

発行前報告書

発行前報告書PDFデータ