ポイント

資本支出とSPTsを結び付けている事例

  • ENEL社はイタリアのエネルギー関連企業。同社はエネルギー関連企業が脱炭素への移行実現のためにサステナビリティ・リンク・ボンドを発行するとともに、資本支出とSPTsを結び付けている事例。同社のサステナビリティ・リンク・ボンドでは、KPIsの一つとして、資本支出がEUタクソノミーに則している比率を含めている。
  • また同社は、2022年にサステナビリティ・リンク・ファイナンシング・フレームワークを策定し、2025年までに同フレームワークのもとでの資金調達比率を70%とする旨公約している。

詳細

発行概要 発行年月 額(百万USD) 償還期日 利率
1 2023/2 801 2031/2 4.00%
2 2023/2 801 2043/2 4.50%
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2023年2月にサステナビリティ・リンク・ファイナンシング・フレームワークを策定。
左記の他、2017年よりグリーンボンド(3件、約40億ドル)、2019年よりサステナビリティ・リンク・ボンド(11件、約295億ドル)を発行している。
以下は、全て2023年のサステナビリティ・リンク・ファイナンシング・フレームワークに関する情報。

サステナビリティ計画との関係

以下は、ENEL社のサステナビリティ戦略の優先事項。これらは、同社が発行したサステナビリティ・リンク・ボンドのSPTsに関連づけられている。

  • 2040年までにすべてのGHG排出スコープ(1~3)においてネットゼロを目標。国際ベンチマークでもある1.5℃移行経路に沿ったSBTiに基づきGHGを削減。
  • 2040年までに再生可能エネルギーを100%とする。この間、2025年までに蓄電池システムを21GWまで高めるとともに、2027年までに石炭発電をフェーズアウト。
SPTs
  • 発電に伴うGHG排出強度(スコープ1):2030年72gCO2eq/kWh, 2040年0gCO2eq/kWh
  • 発電および最終電気消費者からのGHG排出強度(スコープ1と3):2030年73gCO2eq/kWh、2040年0gCO2eq/kWh
  • ガス販売に関するGHG排出総量(スコープ3):2030年 11.4百万トンCO2eq、2040年 0百万トンCO2eq
  • 再生可能エネルギー設置比率:2025年 75%、2030年 85%、2040年 100%
  • 資本支出がEUタクソノミーに則している比率:2025年~2030年間に80%
KPIs

上記の5つのKPIs。同社全体のカーボンフットプリントから見た場合、発電に伴うGHG排出量(KPI1)は36%、発電と最終電気利用者からのGHG排出量(KPI2)は57%、そしてガス販売に関するGHG排出量は20%を占めている。

債券の特性

SPTsを達成できなかった場合、25bpsのクーポンステップアップ。ただし、同社のコントロールが及ばない理由により達成できないは対象としないとともに、SPTsを適宜調整する。

レポーティング

KPIsのパーフォーマンスやSPTsの達成状況等必要な情報を毎年報告するとともに、SPTsのパフォーマンスに影響を及ぼし得る場合にも情報を開示する。

検証

毎年SPTsに対する同社のパフォーマンスいついて、独立した外部検証を実施。同検証報告書を開示する。

外部レビュー

2023年2月、サステナビリティ・リンク・ファイナンシング・フレームワークに関してMoody’sよりSPOを取得。ICMAのサステナビリティ・リンク・ボンド原則やLMA/APLMA/LSTAのサステナビリティ・リンク・ローン原則に沿ったものとなっているかを含めレビューを実施。KPIの設定については、マテリアリティ、過去からのトレンドとの比較、同業者との比較、国際ベンチマークとの比較を通じて、妥当性、重要性、期待されるインパクトという観点から評価。

  • 出所:Moody’s (2023) “Second Party Opinion” を基に環境省作成