ポイント

不動産ディベロッパーによるサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)発行であり、SPT未達成の場合に金利ではなく同額のクレジット購入によるカーボンオフセットを実施する事例

  • New World Development(NWD)社は香港の不動産業を中核事業としている企業で、New World Development Group社の傘下にある。New World Development Group社は、NWDの他、インフラ・サービス(NWS Holdings Limited)、小売(New World Department Store China Limited)を展開するグループ企業である。
  • New World Development社は2019年と2020年にGRESB(Global Real Estate Sustainability Benchmark)で5つ星(最高)の評価を取得。
  • 2021年1月、サステナビリティ・リンク証券フレームワークを策定。同フレームワークは、サステナビリティ・リンク・ボンドのSPTを達成できなかった場合、投資家に高い金利を支払う代わりに、カーボンオフセットのためのクレジット購入に充てるとしている。
  • 本債券の発行は、New World Development社の再生可能エネルギーロードマップの目標を支援するもの。グレーターベイエリアの賃貸物件で消費される再生可能エネルギーの割合を、現在の1%未満から 2025年度末までに100%にするというSPTを設定。
  • SBT(SCIENCE BASED TARGETS)により認定を受けている。

詳細

発行概要 発行年月 額(百万USD) 償還期日 利率
1 2021/1 200 2031/1 3.75%
  • 国際資本市場協会(ICMA)のサステナビリティ・リンク・ボンド原則に基づき、2021年1月にサステナビリティ・リンク証券フレームワークを策定。
サステナビリティ計画との関係
  • New World Developmentグループの長期的なビジネス戦略に関連し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を参考に、2018年に「New World Developmentサステナビリティ・ビジョン2030」(以下、SV2030)を策定。“グリーン”は、SV2030の4つの柱のうちの一つとして位置づけられている。
  • New World Development社は、同社の再生可能エネルギーロードマップに基づいてサステナビリティ・リンク証券フレームワークを作成。ロードマップは、SV2030目標を超えるスコープ2排出量の削減と、エネルギーポートフォリオの多様化を目指している。
SPTs
  • 2026年度までに香港、マカオ、中国南部の広東省の9つの自治体一体を指すグレーターベイエリア(以下GBA)の13の賃貸物件で再生可能エネルギーの使用を100%とする。
KPIs
  • GBA賃貸物件における再生可能エネルギーの割合(GBA賃貸物件は、グレーターベイエリアのディベロッパーとして、New World Development社の開発パイプラインの大部分を占めており、2026年度までの中核となる不動産事業をカバー)。
債券の特性
  • New World Development社がSPTを達成できなかった場合、本債券の残存期間中、完全に償還されるまでの間、毎年25bpsのクーポン増額に相当するクレジット購入によるカーボンオフセットを実施。
レポーティング
  • 債券の満期まで年次レポーティングを開示。レポーティングでは以下を開示
    • KPI のパフォーマンスに関する最新情報等
    • SPTのパフォーマンスと関連するインパクトの検証レポート
    • SPTの野心レベルをモニタリングするための情報
検証
  • 2026年度末からはSLBのKPI・SPTのパフォーマンスを証明するため、レビューまたは保証(assurance)を受ける。結果は、当社のウェブサイトで公開される。
外部レビュー
  • サステナリティクス社によるSPOを取得し、ICMAのサステナビリティ・リンク・ボンド原則(SLBP)との整合性が確認されている。
  • Sustainalytics(2020)“Second Party Opinion”
    New World Development “New World Development Sustainability-linked Bond Framework” New World Development等を基に環境省作成