サステナビリティ・リンク・ボンド原則
(The Sustainability-Linked Bond Principles:SLBP)
サステナビリティ・リンク・ボンド原則(SLBP)(日本語訳)
は、サステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)発行に関する自主的ガイドラインです。(ESGの観点から)持続可能性に貢献する企業を奨励し資金供給する上で、債券市場の役割を発展させるために、2020年6月に策定されました。SLBPでは、SLBの定義を、発行体が事前に定義したサステナビリティ/ESG目標を達成しているか否かに応じて、債券の財務的および/または構造的特性が変化し得るあらゆるタイプの債券商品、としています。調達資金は一般的な目的に充当されることを意図しています。
また、2021年2月には、SLBPに関するQ&A(英語原文)が作成・公表されています。
SLBPは、以下の5つの核となる要素で構成されています。
1. 重要業績評価指標(KPI)の選定
- KPIは、以下を満たしているべき:
- 発行体の事業全体に関連があり、中核的かつ重要であり、発行体の現在および/または将来の事業にとって戦略的に重要であること
- 一貫した方法論に基づいて測定可能または定量化可能であること
- 外部検証が可能であること
- ベンチマーク化が可能であること(つまり、後記する「2.サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)」の野心レベルの評価を容易にするために、可能な限り外部の参照基準や定義を使用することこと)
- KPIの定義は明確でなければならず、その適用スコープや計算方法が示されるべき
2. サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)の設定
- SPTsは誠実に設定され、発行体はSPTsの達成に決定的な影響を与える可能性のある戦略的情報を開示しなければならない。
- SPTs は以下のように野心的であるべき:
- SPTsは従来通りの事業(BAU)よりも、大幅な改善となっている
- SPTsは可能であればベンチマークまたは参照可能な外部指標と比較する
- SPTsは発行体の全体的なサステナビリティ戦略/ESG 戦略と一致している
- SPTsは債券の発行前(または発行時)に設定されている
- SPTsの設定は、以下の複数のベンチマークの組み合わせに基づくべき:
- 発行体自身の直近のパフォーマンスの水準(可能であれば、最低過去3年間)
- 発行体の同業他社、及び/または、セクター基準(可能な場合には)
- 科学的根拠に基づくシナリオ分析や絶対値、国・地域・国際目標、認定されたBAT(利用可能な最良の技術)等
- 目標設定に関する開示は、以下の情報を明確に述べるべき:
- 目標達成までのタイムライン
- 検証されたベースラインまたは参照ポイント、及びそれらを選定した根拠(適宜)
- ベースラインの再計算が行われる場合、どのような状況か(適宜)
- SPTsをどのように実現しようとしているのか(可能であれば)
- 発行体にはコントロールできない、SPTs達成に影響を及ぼし得る要素
- SLB発行に際しては、SLBPの5つの要素との整合性を確認するために、発行体は外部レビュー機関(例:セカンド・パーティ・オピニオン)を活用することが推奨される。
3. 債券の特徴
- SLBの礎は、KPIが事前に定義された SPTsに到達しているか否かで、債券の財務および/または構造の特性が変化することである。その変化については、クーポンの変更が一般的となっているが、その他の財務およびまたは構造上の変更を検討することも可能である。
4. レポーティング
- SLBの発行体は、以下の情報について、容易にアクセス可能にするべき:
- KPIのパフォーマンスの最新情報
- SPTsに関連する検証保証報告書の概要
- 投資家がSPTsの野心レベルをモニタリングできるようにするための情報
- レポーティングは、定期的に、少なくとも年1回開示されるべき。
5. 検証
- 発行体は、少なくとも年一回は、SPTsの達成状況に関して、独立した外部の検証を求めるべき(should)である。また、その検証結果は、開示されるべき(should)である。
- (「2.サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)の設定」で述べた通り)発行前の外部レビュー(例:セカンド・パーティ・オピニオン)が推奨されている(recommended)が、発行後の検証は、必ず実施されなければならない。