サーキュラーエコノミーに焦点を当てた初のサステナビリティボンドの事例

  • Intesa Sanpaoloは、イタリアを拠点とする同国最大規模の銀行グループで、欧州でも有数の金融機関である。貸付、預貯金、投資銀行業務、プライベートバンキング、資産管理、保険等の業務を国際的に展開している。約9万人の従業員を擁し、イタリア証券取引所(BIT)に上場している。
  • 2019年11月に、サーキュラーエコノミーに焦点を当てた初のサステナビリティボンドを発行した。資金使途は、サーキュラーエコノミーの推進に該当する分野で、具体的には、商品・材料の製品寿命や使用サイクルを延長するソリューション、再エネ・リサイクル資源を燃料とする生産プロセス・製品、企業内部やサプライチェーンに沿って、資源消費の有効性と効率を大幅に向上させる製品サービス、使用後の収集・分離・リサイクルの効率的な枠組み内で完全にリサイクルまたは堆肥化できる製品の設計・製造等である。発行当時の資金使途としては、商品の使用(消費)期限の延期が49%、次に再エネが33%、コンポスト・リサイクル可能な製品が14%を占める。
  • 共同主幹事として、BancaIMI、CreditAgricole、ING、ソシエテジェネラルが参画しており、うちBancaIMI、CreditAgricoleはグリーンファイナンスに係るアドバイザーを務めた。
  • 2018年に公表した同社の2018~2021年の事業計画において、サーキュラーエコノミーの推進を取組事項の一つとして掲げており、今回のサステナビリティボンド発行を通して同分野における取組の推進を企図しているものと思われる。

詳細

発行概要   発行年月 金額(百万USD) 償還期日 利率
1 2019/11 830 2024/11 0.75%
2017年6月には総額5億ユーロの環境プロジェクトに関連するグリーンボンドを発行している。当該ボンド発行後は毎年グリーンボンドレポートを公表している。2020年6月発行の最新版では、資金使途は太陽光発電60.5%、風力13.3%、バイオエネルギー15.1%、水力9.3%、省エネ1.8%で、資金提供されたプロジェクトにより、年間約46万トンのCO2排出削減に貢献している。
中長期計画との関係

2018年に公表した同社の2018~2021年の事業計画において、サーキュラーエコノミーの推進を取組事項の一つとして掲げており、今回のサステナビリティボンド発行を通して同分野における取組の推進を企図しているものと思われる。

フレームワーク

2017年のグリーンボンド発行の際にグリーンボンドフレームワークを策定しているが、今般のボンド発行に際して、改めてサステナビリティボンドフレームワークを策定している。

調達資金の使途

資金使途として適格対象とされるのは以下の分野である。

  • サーキュラーエコノミー
    • 商品・材料の製品寿命や使用サイクルを延長するソリューション
    • 再生可能・リサイクルされた資源を燃料とする生産プロセス・製品
    • 企業内部やサプライチェーンに沿って、資源消費の有効性と効率を大幅に向上させる製品サービス
    • 使用後の収集・分離・リサイクルの効率的な枠組み内で完全にリサイクルまたは堆肥化できる製品の設計・製造
  • 環境
    • 再生可能エネルギー
    • 省エネルギー
    • 生物天然資源と土地利用の環境的側面での持続可能な管理
  • 社会
    • 社会インフラ
    • 自然災害の影響を受け、経済状態が悪いイタリアの地域と人口
    • 非営利およびサードセクター
    • ベネフィット・コーポレーションと認定Bコーポレーション1

適格対象とならず、資金が割り当てられない分野の例として、以下が挙げられている。

  • 温室効果ガスを多く排出する活動
    • 化石燃料の開発、化石燃料に依存するインフラ、化石燃料を用いる火力発電所、高炭素資産
  • 議論の余地のある活動
    • アルコール、動物虐待、兵器、危険化学物質、ギャンブル、食品・飼料中の遺伝子組み換え生物(GMO)、原子力、性風俗産業、タバコ
プロジェクト評価及び選定プロセス

プロジェクトの評価と選定に際して、財務部、CSR部、サーキュラーエコノミーデスク、サステナビリティファイナンスデスクで構成される内部チーム「サステナビリティボンドワーキンググループ」が、適格基準に基づいて、レビュー・承認を実施する。

調達資金の管理

調達資金は、サステナビリティボンドフレームワークに基づき、適格プロジェクトに充当される。対象プロジェクトの詳細等については、年次サステナビリティボンドレポートで開示される。

レポーティング

インパクトレポートでは、環境と社会に関する以下の項目に関して報告を行うこととしている。以下表は、その環境の項目である。レポーティングは毎年実施される。

サーキュラー
エコノミー
カテゴリー
環境への
メリット
アウトプット
の報告指標
インパクト
の報告指標
方法論と前提
1 - 商品・材料の製品寿命や使用サイクルを延長するソリューション 気候変動の緩和

自然資本の再生

ゴミ・汚染を出さない設計
・ 製品の再設計、新しいビジネスモデル、リバースロジスティクス(t)で回収された材料の量 回避されたCO2排出量(t) GHGプロトコル
2 - 再生可能・リサイクルされた資源を燃料とする生産プロセス・製品 ・ 再生可能エネルギー利用率(MW)の増加
・ 生物由来/リサイクル材料の利用の増加(t)
3 - 企業内部やサプライチェーンに沿って、資源消費の有効性と効率を大幅に向上させる製品サービス ・ 生産工程で再投入された廃棄物や副産物の量(t)
・ 無駄にしなかった食品の量(t)
4 - 使用後の収集・分離・リサイクルの効率的な枠組で完全にリサイクル・堆肥化できる製品の設計・製造 ・ 完全にリサイクル可能な商品の生産量(t)
・ 完全に堆肥化できる商品の生産量(t)
5 - 循環型ビジネスモデルを可能にする革新的技術 ・ 他基準のKPIで説明責任を負わない技術への投資
環境カテゴリー 環境へのメリット アウトプットの
報告指標
インパクトの
報告指標
方法論と前提
再生可能エネルギー 気候変動の緩和 ・ 設備容量(MW) 回避されたCO2排出量(t) GHGプロトコル
・ 推定再生可能エネルギー発電量(MWh、将来のプロジェクト)
・ 再生可能エネルギー発電量(MWh、可能な場合、過去・将来のプロジェクト)
エネルギー効率 気候変動の緩和 ・省エネ(MWh、将来のプロジェクトは事前見積り、過去のプロジェクトは可能な場合事後の年次測定) 回避されたCO2排出量(t) GHGプロトコル
・ 取得した環境ラベル
生物/天然資源と土地利用の環境的に持続可能な管理 気候変動への適応

生物/天然資源と土地利用の環境的に持続可能な管理

環境的に持続可能な農業
・ ヘクタールあたりの生態学的に持続可能な農業生産(t) 回避されたCO2排出量(t)

洪水や干ばつの影響緩和対策から恩恵を受けている人・企業(例:企業や農場)の数
GHGプロトコル

ビジネスレポート
・ 追加的に転換された植林地
・ 自然景観のエリアの保護
外部レビュー

2019年、サステナビリティボンドに対するSPO取得(ISS ESG)

  • CBI(2020)“Data”、Intesa Sanpaolo (2019) “Sustainability Bond Framework”、ISS (2019) ”SECOND PARTY OPINION Sustainability Quality of the Issuer and Sustainability Bond Asset Pool”、ISS ESG (2019) ” External Review Report ”等を基に環境省作成