教育機関における活用例

  • Macquarie Universityは、40,000人以上の学生と3,000人のスタッフを擁するオーストラリアの公立大学である。
  • 2018年8月にサステナビリティボンドを発行した。トランシェが2つに分かれており、それぞれ金額は147百万USD(約154億円)、37百万USD(約38億円)、期間は10年、25年である。リードマネージャーとして、National Australia Bank、HSBCが参画している。
  • 資金使途は、環境・社会にプラスの影響をもたらすキャンパス開発。 具体的にはグリーンビルディング、再エネ、省エネ、汚染防止・管理、持続可能な水・廃水管理、天然資源と土地利用の環境的に持続可能な管理、重要なサービスへのアクセス、社会経済の進歩とエンパワーメント等。
  • 同大学の「持続可能性戦略2015-2019」では、温室効果ガス排出強度を40%削減する(2009年比)こと、新しい建物における飲料水の消費量を2007年比で40%削減すること、2020年までに廃棄物の埋立て処理の90%削減すること等を優先事項としている。

詳細

発行概要   発行年月 金額(百万USD) 償還期日 利率
1 2018/8 147 2028/9 3.58%
2 2018/8 37 2043/9 4.50%
中長期計画との関係

2014年に策定したキャンパス整備のマスタープランにおいて、実施事項として持続可能なキャンパスの実現を掲げており、持続可能性の向上に係る取組を実施してきた。今般のボンド発行は、当該マスタープランで言及されている持続可能なキャンパスの実現のため、整備に係る資金を調達するものである。

フレームワーク

同社では、2018年に初版のサステナビリティファイナンシングフレームワークを策定している。同フレームワークは、同年のボンド発行に対して適用されている。

調達資金の使途

環境・社会にプラスの影響をもたらす方法でのキャンパス開発

  • グリーンビルディング
  • 再エネ、省エネ
  • 汚染防止・管理
  • 持続可能な水・廃水管理
  • 天然資源と土地利用の環境的に持続可能な管理
  • 重要なサービスへのアクセス
  • 社会経済の進歩とエンパワーメント

なお、除外対象となる項目として、アルコール、たばこ、ギャンブル、武器、捕鯨等が挙げられている。

プロジェクト評価及び選定プロセス

プロジェクト評価・選定に際して、財務チーム、サステナビリティチーム、プロパティチームから構成されるサステナビリティファイナンスワーキンググループを組成している。ワーキンググループで適格プロジェクトとされたものは、財務・プロパティ委員会でのレビュー・承認プロセスを経て、大学評議会に諮られる。

調達資金の管理

資金管理は、サステナビリティファイナンスワーキンググループが実施。資金拠出を行った対象プロジェクトに関して、環境・社会影響等も含めて毎年モニタリングする。

レポーティング

インパクトレポートには、対象プロジェクトに応じて以下の指標が用いられる。結果については、毎年発行するサステナビリティファイナンスレポートにて開示する。

対象カテゴリ インパクト指標
グリーンビルディング
  • グリーンまたは同等の認証を取得
  • ESD(Ecologically Sustainable Design)原則スコアカード
  • 持続可能な方法で調達された材料(認証製品、リサイクルコンテンツを含む)(%)
代替エネルギーとエネルギー効率
  • 発電量(MW、全体に占める%)
  • 優れた設計による節電量(kWh)
  • CO2およびその他の温室効果ガス(GHG)の回避/削減(tCO2e)
  • 建物のエネルギー使用量削減量(%)
汚染防止と管理
  • 削減、再利用、リサイクル、埋め立て地から転用された廃棄物の量(t)
  • 廃棄物管理(tCO2e)によって回避/削減されたCO2およびその他のGHG
  • リサイクル不可能な廃棄物によるエネルギー施設エネルギー量(kWh)
  • 分離・収集、処理(堆肥化を含む)、処分された廃棄物の量(t、%)
  • 建物内の大気汚染物質の削減(%)
持続可能な水と廃水管理
  • 水消費量の削減(㎥)
  • 再利用のために採取された水の量(kL)
  • 処理、再利用、回避された廃水の量(㎥)
生物天然資源と土地利用の持続可能な管理
  • オープンスペースで覆われている土地(ha、%)
  • 樹木、植物、低木などで覆われた土地(ha、%)
  • 植えられた木の数
  • 生物多様性の損失の回避・削減(種の数)
  • 土壌/土地/水の品質向上
  • 新設・更新の場合:生態系/森林の保護/回復/持続可能な利用/土地の劣化と生物多様性の損失の停止・脱却に貢献する研究プログラムの数
  • 新設・更新の場合:海洋、海、海洋資源の保全と持続可能な利用に貢献する研究プログラムの数
重要なサービスへのアクセス
  • 新たな/改善されたヘルスケア施設に通える人数
  • 信頼性の高いwifiネットワーク、学習成果向上のための技術面の更新によってカバーされるキャンパスの割合
  • 障害やジェンダーに配慮し、安全で非暴力的で包括的かつ効果的な学習環境を提供する、新設/更新された施設数
社会経済的進歩とエンパワーメント
  • 安全でアクセス可能な低炭素輸送システムへのアクセス
  • プロジェクト実施の計画・管理に参加している関係者数
  • 新設/改修を通じて教育を受けている人々の数
外部レビュー

2019年、サステナビリティファイナンシングフレームワークに対するSPOを取得(Sustainalytics)
年次レビューの結果は、同大学のWebサイトで公開される。

  • CBI(2020)“Data”、Macquarie University (2018) “Sustainability Financing Framework”、 Macquarie University (2018) “External Review Report“等を基に環境省作成