ポイント:生物多様性を資金使途とした例

  • Scotiabank は、カナダ五大銀行の一角をなす金融機関である。南北アメリカを中心に世界50か国に展開し、約2,500万人の顧客に対し、法人・個人向け銀行サービス、投資銀行業務、資本市場業務等を提供している。約1万人の従業員を擁し、トロント証券取引所(TSX)とニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場している。
  • 同行は化石燃料業界への資金提供が多いとの指摘がNGOからあったものの、今般、初のグリーンボンドを発行し、また2025年までに気候変動の影響削減のため1000億ドルを投資する方針を同年11月に発表した。
  • 当該グリーンボンドの対象とする資金使途は幅広く、水陸両方の生物多様性向上・保全に貢献する活動も含まれている。

詳細

発行概要   発行年月 額(百万USD) 償還期日 利率
1 2019/7/18 500 2023/1/18 2.375%
中長期計画との関係

初のグリーンボンド発行後ではあるが、2019年に気候変動対応に関する今後の方針を示した「Scotiabank’s Climate Commitments」を発表しており、同コミットメントの中で気候変動対策に係る資金動員について言及している。具体的には、以下の5点である。

  • 2025年までに気候変動対策として1000億ドルを動員する
  • 気候関連の強固なガバナンスとレポーティングの透明性を確保する
  • 融資、ファイナンス、投資における気候変動リスク評価の統合を推進する
  • 銀行オペレーションを直接・間接に脱炭素化し、気候変動の影響を軽減するための革新的なソリューションを特定する
  • 気候変動センターを設立し、内外の協力・対話・情報共有を促進し、気候変動に関する国際的な対話に貢献する
フレームワーク

同社では、2019年に初版のグリーンボンドフレームワークを策定している。同フレームワークは、同年のグリーンボンド発行に対して適用されている。

調達資金の使途

再生可能エネルギー、省エネ、汚染防止・制御、生物資源・土地利用の環境持続可能な管理、陸上・水生生物多様性の保全、クリーン輸送、持続可能な水資源・排水管理、グリーンビルディング。このうち、陸上・水生生物多様性の保全、持続可能な水資源・排水管理については、以下のプロジェクトを資金使途としている。

活動の詳細説明
陸上の生物多様性の保全

生物資源の持続的な管理・土地利用、自然の生態系の保護や回復に貢献する活動へのローン。例えば、以下のような活動。

  • EU Organic、USDA Organic、Canada Organicのような第三者認証機関によって認証された、環境持続可能な農業
  • Rainforest AllianceやFairtradeなどの第三者認証を取得した環境に配慮した持続可能な動物飼育
  • Rainforest AllianceやFairtradeなどの第三者認証を取得した作物保護など、気候に配慮した農業投入物
  • Marine Stewardship Council(MSC)、Aquaculture Stewardship Council(ASC)、Friend of the Sea(FOS)などの第三者認証を取得した持続可能な漁業と養殖
  • Forest Stewardship Council (FSC)やProgramme for the Endorsement of Forest Certification(PEFC)などの第三者認証を取得した持続可能な森林管理
  • 自然景観の保全または復元
水生生物多様性の保全

陸域又は水域の保全又は向上に資する活動へのローン。例えば、以下の活動。

  • Marine Stewardship Council(MSC)のような信頼できる第三者認証機関の認証を受けた沿岸、海洋、流域環境の保護
持続可能な水と廃水の管理

水質・分配効率・保全を改善する活動へのローン。例えば、以下のような活動。

  • 適切な環境アセスメント、内部承認および外部認証を前提とした洪水防止、洪水防御または雨水の管理
  • 下水処理システムなどの水処理インフラ
  • 効率の良い配水システム
  • 雨水管理システム、配水システム、帯水層貯留、下水道システムを含む取水・貯水インフラストラクチャ
プロジェクト評価及び選定プロセス

グリーンボンドフレームワークの履行については、銀行の資産負債委員会(ALCO)が監督する。ALCOのメンバーには、CFO、Chief Risk Officer (CRO)、財務担当、部門長が含まれる。
ALCOは、同行の環境・社会リスクと機会チーム、サステナブルビジネスチームからの支援や助言を受け、適格なグリーンアセットのレビュー・承認、グリーンボンドフレームワークとフレームワークへの変更に係るレビュー・承認、投資家向けグリーンボンド年次報告書のレビュー・承認、ボンド発行後の外部検証レポートの確認や発生した問題の解決等を半年ごとに実施する。なお、適格プロジェクトに選定されたすべてのグリーンアセットは、環境・社会レビューの対象とされている。

調達資金の管理

適格グリーンアセットへの調達資金の充当、ポートフォリオの管理は、同行の財務チームが担っている。グリーンボンドからの純収入は一般勘定に入金され、純収入に等しい金額が適格グリーンアセットポートフォリオに割り当てられる。グリーンボンドの元利金の支払いは、一般資金から行われ、適格なグリーンアセットのパフォーマンスとは関連付けられない。

レポーティング

グリーンボンドの年次報告書を通じて、ボンドの収益配分や貸付けるローンに関する情報を投資家に共有する。レポートは、関連するグリーンカテゴリレベルで作成される。同報告書は当社ウェブサイトにて公開する。

  • アロケーション・レポーティング
    • 調達資金額
    • 適格カテゴリに充当された資金の合計額
    • レポーティング時点での未充当金の残高
    • リファイナンスの割合
  • インパクト・レポーティング
    • 再エネ:CO2排出削減量(tCO2e)、発電容量(MW)
    • 省エネ:CO2排出削減量(tCO2e)、期待される節減電力量/年(MWh/年)
    • 汚染防止・制御:CO2排出削減量(tCO2e)、廃棄物の埋立処分量(t)
    • 生物資源と土地利用の環境持続可能な管理:資金が充当された面積(he)
    • 陸上・水生生物多様性の保全:資金が充当された面積(he)
    • クリーン輸送:CO2排出削減量(tCO2e)
    • 持続可能な水資源・排水管理:節水・削減・処理量
    • グリーンビルディング:CO2排出削減量(tCO2e)、グリーン不動産の床面積(㎡)
外部レビュー

2019年、グリーンボンドフレームワークに対するSPO取得(Sustainalytics)

  • CBI(2020)“Data”、Scotiabank (2019) “Green Bond Framework”、 Scotiabank (2019) ”Scotiabank’s Climate Commitments”、 Scotiabank (2019) ”2019 ESG Report”等を基に環境省作成