ポイント

  • Anglian Water社はイギリス東部において上下水道の建設・運営管理を行う民間企業である。同社は1973年に地域水道公社として設立されたが、1989年に民営化された。顧客数は約6百万人。地域と協力して水を守る活動にも力を入れており、例えば、家庭から出る油類が排水に混じらないようなキャンペーンを実施し、このモデルが他の都市にも展開されている。
  • 以下「詳細」の中長期計画及びフレームワークは、Anglian Water社の2019年6月および2021年9月発行の債券に関連する情報である。
  • 2019年6月に発行したボンドの資金使途は、省エネ型浄水施設等の炭素排出削減に寄与する活動を重視している。2021年9月に発行したボンドは、第一生命保険の私募によるものであり、調達資金は生物多様性の保全に資するプロジェクトに限定して充当するとしている。例えば、湿地を活用した天然の水処理施設の整備プロジェクトや、河川の流れや水辺環境を整備し自然河川の特徴を復元させるプロジェクト等に充当される。

詳細

発行概要   発行年月 額(百万USD) 償還期日 利率
1 2017/8/10 326.05 2025/8/10 1.625%
2 2018/10/9 85.43 2018/10/9 -
3 2018/10/26 384.72 2029/10/26 -
4 2019/6/20 65.01 2039/6/20 -
5 2021/9/15 35 2026/9/15 -
  • 2019年6月発行の債券は円建て
2019年6月発行のグリーンボンド
中長期計画とグリーンボンド
  • Anglian Water社は炭素排出削減に関連して「Drop CO2」という戦略を採用。同戦略では、当社事業において日々の活動から発生する炭素とともに各種施設から発生する炭素の排出量を、2050年までにネットゼロにすることを目指している。この目標を踏まえて上下水道整備計画が作成される。
  • 水管理施設を含むインフラストラクチャにおいて、ライフサイクルおよびバリューチェーン全体から発生する炭素を管理するため、英国規格協会のもとで作成された国際規格(公共仕様書:PAS2080)の認証を受けている。
フレームワーク
  • 2019年6月発行のグリーンボンドは、2017年に作成されたグリーンボンドフレームワークに基づき発行される。本フレームワークの概要は以下のとおり。
調達資金の使途
  • 炭素排出量削減・気候変動適応型水管理事業:省エネ型浄水施設、予備貯水池建設、水資源保全等
  • 水リサイクリング事業:下水道網整備、汚水三次処理、湿地活用による汚水処理、汚泥リサイクル等
  • 上記事業は同社の第6期資産管理計画(2015-2020年)における投資計画(50億スターリングポンド)に基づくもの。
プロジェクト評価及び選定プロセス
  • 同社は第6期資産管理計画の実施体制枠組みの中でグリーンボンド事業の評価と選定を行う。同実施体制枠組みでは、業務、資産管理、法律、財務の各部局の代表から構成される投資開発グループがグリーンボンドの対象とするプロジェクト候補を検討し、最終的に役員レベルにてプロジェクト選定が行われる。
調達資金の管理
  • 社内の会計システムにて資金管理を行う。
レポーティング
  • 調達資金の配分額、炭素削減効果、未配分額を年1回で開示。また、グリーンボンド原則を作成している国際資本市場協会(ICMA)による上下水道分野のインパクトレポート雛型に記載されている指標を追加的に開示する見込み。
  • この他、環境インパクトとして管路網からの漏水削減、(スラッジ等を活用した)再生可能エネルギー発電量、汚染事故の減少等についてもレポーティングする予定としている。
外部レビュー
  • 2017年、本フレームワークに対するセカンドオピニオン(DNV GL)を取得。セカンドオピニオンは自社ホームページにて開示。
2021年9月発行のグリーンボンド
中長期計画とグリーンボンド
  • Anglian Water社は生物多様性保全に関する経営目標として、2019年対比で「Biodiversity Units」をネットで10%増加させることを目指している。「Biodiversity Units」はOfwat(経済規制当局)が設定する算式によって計算される。本債券の資金が投下されるプロジェクトは当該目標にリンクする。
フレームワーク
  • 2021年9月発行のグリーンボンドは、2020年に作成されたサステナビリティ・ファイナンス・フレームワークに基づき発行される。本フレームワークの概要は以下のとおり。
調達資金の使途
  • 調達資金は、本フレームワークの生物多様性保全に関する適格カテゴリー「Improving our environment」およびグリーンボンド原則(ICMA)のカテゴリー「Terrestrial and aquatic biodiversity conservation projects」に該当するプロジェクトに充当され、具体的には湿地を活用した天然の水処理施設の整備プロジェクトや自然河川の特徴を復元させるプロジェクト等に投下される。
プロジェクト評価及び選定プロセス
  • 財務、業務、経営管理の各部局の代表から構成される投資開発グループが調達資金の充当対象とするプロジェクト候補を検討し、最終的に役員を含む組織にてプロジェクト選定が行われる。
調達資金の管理
  • 社内の会計システムにて、カテゴリーアプローチ(category approach)により資金管理を行う。
    *カテゴリーアプローチとは、プロジェクトを適格カテゴリー毎に分類し、本フレームワークに基づく債券発行による調達資金を会計記録上の適格カテゴリーに割り当てるアプローチを指す。
レポーティング
  • 調達資金が全額充当されるまで毎年、資金の充当状況についてレポーティング。また調達資金が充当されたプロジェクトによって、リン酸を除去した再生水の量、生態系が改善された河川の長さ等がレポーティングされる。
外部レビュー
  • 2020年、本フレームワークに対するセカンドオピニオン(DNV GL)を取得。
    2021年、本債券に対するセカンドオピニオン(DNV)を取得。
  • Anglian Water(2017)「グリーンボンドフレームワーク」、Anglian Water(2020)「サステナビリティファイナンスフレームワーク」、Anglian Water (2019) “PR19 Final Determinations, Anglian Water ‒ Outcomes performance commitment appendix” を基に環境省作成