ポイント

  • Engie社は、グローバルにエネルギーに関連する事業を展開する企業で、現在は発電(うち、特に天然ガスと再生可能エネルギー)、エネルギーネットワーク、コンサルティングの3つの中核事業がある。世界中に、約16万人の社員を抱え、104.3 GWの発電容量を持つ。
  • ゼロカーボンへの移行においての世界の電力業界のリーダーとなる野心を掲げ、同社のGHG排出を2度目標と整合性をとるため、2050年までに直接排出を85%減少させることを目標としている。
  • 目標実現に向け、過去6回グリーンボンドを発行し、債券発行残高の40.7%がグリーンボンド(2019年11月初旬時点)となっている。
  • 同社は、グリーンボンド発行に財務的メリットはないが、エネルギー移行は不回避のトレンドで、対策を取らない追加コストの方が大きいと考えている。そして、グリーンボンド発行のメリットを、①社内のESG関連内部手続きの強化、②投資家ベースの拡大、③CO2排出削減効果に関するコミュニケーションツールとしての役割、の3点としている。

詳細

発行概要   発行年月 額(百万USD) 償還期日 利率
1 2014/5/19 3427.25 2026/5/19 1.375%
2 2017/3/27 1629.6 2028/3/27 -
3 2017/9/28 1499.25 2023/2/28
2029/2/28
0.375%
1.375%
4 2018/1/16 1225.6 2030/10/24 1.375%
5 2019/1/28 1142.8 2027/1/21
2039/1/19
0.375%
3.25%
6 2019/6/21 1694.96 2027/6/21
2039/6/21
0.375%
1.375%
7 2019/10/24 1001.04 2030/10/24 0.5%
  • 2018年1月の発行は、発行体の倒産・清算時に債務弁済順位が他債務より低く、償還期限がない永久劣後債(Deeply Perpetual Subordinated Bond)で、発行体のコール(満期前に債券を償還できる発行体の権利)を禁止するノンコール期間は5.25年。
  • 2019年1月の発行は、永久劣後債(Perpetual Subordinated Bond)で、ノンコール期間は6年1か月。
中長期計画とグリーンボンド
  • Engie社のGHG排出を2度目標と整合性をとるため、2050年までに直接排出を85%減少させることを目標に掲げている。
  • この目標達成のために様々な下位目標を掲げ、計画を実施している。以下は、その主要なものである。
    1. ① 2019‐21年の間に再生可能エネルギーによる発電容量を9GW増加
    2. ② 2020年までに2012年比で発電所からのCO2排出を20%減少
    3. ③ 石炭については、段階的撤退計画(coal phase-out plan)に基づき、石炭関連資産を売却
  • グリーンボンド発行を、サステナブルファイナンスや投資家の持続可能な開発目標(SDGs)を支え、また自社の長期ビジョンを進めるためのものと位置付けている。
フレームワーク
  • 同社では、2017年、2018年、2019年にそれぞれグリーンボンドフレームワークを策定している。2017年版は同年3月以降、2018年版は同年1月10日以降、2019年版は同年1月17日以降のグリーンボンド発行に対してそれぞれ適用されている。
調達資金の使途
  • 再生可能エネルギー(水力、地熱、風力、太陽光、バイオガス、送配電等)
  • 省エネ(熱源利用、コジェネレーション、ビルやプラントの効率性最適化、エネルギー管理システム等)
  • 自然資源の消費低減(水、廃棄物管理等)
  • クリーン運輸・交通(電気・バイオガス・水素、関連インフラなど、CO2又はその他有害物質排出やエネルギー消費の低減に資する事業)
  • その他、グリーンボンド原則に含まれる事業
プロジェクト評価及び選定プロセス
  • 各部署が適宜、グリーンボンドの適格性について申請し、社内グリーンボンド委員会において事業選定の承認をする。ただし、担当部署に、調達資金使途との整合性の立証責任がある。役員会の中にある倫理・環境・持続可能な開発委員会は、調達資金分配に関する進捗などの報告をうける。
  • グリーン適格事業の選定にあたっては、毎年、財務部とCSR部より各事業部のCEO/CFOに適格事業等に関するインストラクションを送り、それに基づいて、各事業部が選定。各事業部は、適格事業の情報を社内データベースにアップロード。監査役は同データベースにアクセスし、アップロードされた事業のデュー・デリジェンスを確保するため、適格事業基準等の確認をする。また、各部署にもCSR担当がおかれ、事業の特定にあたってはCSR部等と緊密に連携。
調達資金の管理
  • 同社の財務部門で管理。
  • グリーンボンド発行日から2年以内に調達資金を充当することを予定。
レポーティング
  • 調達資金の全額充当まで、また、全額充当後は重大な変更があった場合には、調達資金の配分額、プロジェクトリスト、プロジェクトの環境効果、リファイナンスの割合を毎年開示。
  • 自社ホームページにおいて、プロジェクトによる環境効果に関する情報を開示。
外部レビュー
  • 2017年、2018年、2019年のグリーンボンドフレームワークに対するセカンドオピニオン(Vigeo Eiris)
  • グリーンボンドフレームワークでは、外部監査による年次保証報告を実施することになっている。年次保証報告書の内容は、グリーン事業の環境社会基準への整合性、事業に充当された調達資金額と、会計記録との整合性に関する事項。年次保証報告書は、毎年のRegistration Documentに含まれている。2017年、2018年はDeloitte & Associés等が実施。
  • CBI(2019)“Data”、 Engie(2019) “Greenbond Framework”、Engie担当者へのヒアリング等を基に環境省作成