ポイント

グリーン事業に対する邦銀初の海外向け協調融資の事例

  • CMPCは、チリの大手紙パルプメーカーである。セルロース、グラフィック・ペーパー、段ボール、ティッシュペーパー、事務用紙、新聞紙、包装材等の製造・販売を行っている。従業員は約1万9千人おり、中南米、北米、欧州、アジア等、世界45カ国で事業展開している。
  • CMPCは、2019年9月、初のグリーンローンを調達した。融資総額は1億USDで、レンダーは三菱UFJ銀行のほか、群馬銀行、百五銀行、伊予銀行等地銀6行である。邦銀が海外市場でグリーンローンを提供するのは本件が初めてである。ローンの金利は、超低金利の国内市場下において、同等の貸付条件の他ローンよりも0.3%程度高い利回りを得られ、銀行にとっても有利な案件になった。
  • 主な資金使途は、リサイクルや排水・排気システムの改善、省エネ性能の高い社屋ビルの建設資金等である。
  • 当該ローンは同社の持続可能性目標に沿ったものであり、ローン市場協会(LMA)等が定めたグリーンローン原則に定められた要件に準拠している。また、三菱UFJ銀行は、2019年10月、「グリーン/ソーシャル/サステナビリティボンドフレームワーク」を策定し、今般のグリーンローンは同フレームワークに準拠する形で組成された。

詳細

概要   実行年月 金額(百万USD) 融資期間 利率
1 2019/9 100 2024/9 不明

今般のローンに先立ち、同社は2019年にチリ、2018年にペルー、2017年に米国でグリーンボンドを発行しており、2020年にはサステナビリティ・リンク・ローンによる資金調達を行っている。

グリーンローン/グリーンボンドによる資金調達の充当先事業(2019年12月末時点)

対象カテゴリー

対象事業

持続可能な森林の管理

植林事業(チリ)、植林事業(ブラジル)

持続可能な水資源の管理

水資源の循環と再生システム事業(アルゼンチン)、排水処理施設新設(チリ)、排水処理施設改修(チリ)、排水処理施設新設(チリ)

生物多様性の保全と森林資源の回復

自然林の再生と生物多様性の保全

公害防止

公害削減(チリ)、蒸気システム改修(チリ)、中和タンクへのフィルター設置(チリ)

省エネルギー

紙生産機のコスト削減(チリ)

循環経済もしくは環境に配慮した商品

小売り紙バッグ事業(チリ)

グリーンビルディング

社屋ビル(チリ)

中長期計画との関係

CMPCは、中長期的にSDGsの4つの具体的な目標にコミットしている。当該目標は2025年もしくは2030年を達成期限として設定しており、パフォーマンスデータ等の基準年は2018年としている。各目標は以下の通り。

  • 2018年比で、2030年までに直接・間接的な温室効果ガスの排出量を50%削減し、気候への影響を軽減する。(SDGs 13.3)
  • 2018年比で、2025年までに製品1メートルトンあたりの工業用水の使用量を25%削減する。(SDGs 6.4)
  • 2018年比で、2025年までに、削減戦略を推進し、副産物や廃棄物の新しい用途を見つけることで、埋め立て地への廃棄物ゼロを達成する。(SDGs 12.5)
  • 2018年比で、2030年までに、保全・保護・回復の対象地域とされている森林を10万ヘクタール追加する。(SDGs 15.1)
フレームワーク

2019年5月、グリーンファイナンスフレームワーク(Empresas CMPC S.A. May 2019 Green Finance Framework)を策定。同フレームワークは、2019年9月のグリーンローンによる資金調達、ならびに同年7月にチリ市場において行われたグリーンボンドによる資金調達に適用。

調達資金の使途

グリーン資金の使途として次の対象カテゴリーを明記

  • 持続可能な森林の管理
  • 持続可能な水資源の管理
  • 生物多様性の保全と森林資源の回復
  • 公害防止
  • 省エネルギー
  • 循環経済もしくは環境に配慮した商品
  • グリーンビルディング
プロジェクト評価及び選定プロセス

CFO(Chief Financial Officer)ならびにCSO(Chief Sustainability Officer)が議長を務めるサステナビリティ委員会が、対象事業の選定、買収、投資、資金使途を統括。対象となった事業の評価レポーティングは、各事業部署が担当。

調達資金の管理

毎年、グリーンファイナンスによる純調達資金から、その年に対象事業に充当された額を差し引いて収支を算出し、余剰資金を算出、別勘定で管理。

レポーティング

グリーンファイナンスによって調達された資金全額が対象事業に充当されるまで、対象カテゴリー、カテゴリーごとの対象事業、対象事業ごとのKPIを、毎年投資家に対して報告。対象事業による環境インパクトについては、毎年ウェブサイトで報告。

外部レビュー

グリーンファイナンスフレームワークによる環境インパクトについては、毎年SustainalyticsによるSPOを取得。グリーンファイナンスの資金使途については、資金全額が対象事業に充当されるまで、毎年KPMGによる外部監査を実施。

  • Environmental Finance (2020) “Green and Sustainability Linked Loans Database”、CMPC (2019) “CMPC Integrated Report We are the Fiber of the Future”、CMPC (2019) “EMPREAS CMPC S.A. Green Finance Framework May 2019”、 CMPC (2019) “CMPC 2019 Green Finance, 2019 Impact Report”、Sustainalytics (2020)「セカンドパーティ・オピニオン 三菱 UFJ フィナンシャル・グループグリーン/ソーシャル/サステナビリティボンドフレームワーク」等を基に環境省作成