ポイント

廃棄物管理の分野でSPTsを掲げた事例

  • Zagrebacki Holding社は、クロアチアザグレブ市の廃棄物管理、水供給・排水管理、ガス配送等の公共事業を行う企業だが、市政府が100%保有している。廃棄物管理と再生可能エネルギーを主眼としたサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)を発行。
  • クロアチアは2013年にEU加盟。経済制度改革、民営化促進、資本市場拡大等において欧州復興開発銀行(EBRD)が支援。本サステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)の引き受けにおいても協力を行っている。

詳細

発行概要 発行年月 金額(百万USD) 償還期日 利率
1 2023/7 331.636 2028/7 4.9%
2

2023年6月にサステナビリティ・リンク・ボンド・フレームワークをICMAのサステナビリティ・リンク・ボンド原則に準じて作成。同年S&P GlobalよりSPOを取得。
発行金額305百万EURのうち、EBRDと国際金融公社(IFC)がそれぞれ72.5百万EUR(合計145百万EUR)投資。

サステナビリティ計画との関係

同社のサステナビリティ戦略の優先事項は以下の分野であり、このうち、廃棄物管理と再生可能エネルギー分野がSLBのSPTsに関連づけられている。

  • 環境汚染対策およびGHG削減(企業全体で使用するエネルギー全体の約半分が水管理関連となっており当該分野の省エネ化を強化するとともに、再生可能エネルギー比率(現在50%)を更に高める。)
  • 廃棄物管理(廃棄された有機物からのコンポスト化や建設資材のリサイクル等を図り、結果として最終廃棄物処理場の負荷を減らす。)
  • 持続可能なエネルギー利用(省エネおよび再生可能エネルギーの促進)
  • 効率的な水資源管理
  • 気候変動等外部ショックやリスクへの耐性強化
SPTs
  • リサイクル用に選別して収集した廃棄物の比率について、2021年(37%)を基準として、2024年50%、2025年55%、2027年58%とする。
  • 全エネルギー使用量に占める再生可能エネルギー比率について、2023年(50%)を基準として、2025年60%、2027年70%
KPIs
  • KPI1: リサイクル用に選別して収集した廃棄物の比率。廃棄物管理においてリサイクルの向上が市の環境負荷を大きく改善し、資源の有効活用が図られるとともに、リサイクルから生ずる財務収益は会社経営の改善においても重要である。
  • KPI2:全エネルギー使用量に占める再生可能エネルギー比率。これまで省エネについては重点的に取り組んできているが、脱炭素に向けたGHG削減と自家消費対応の観点から再生可能エネルギーの利用を拡大することは極めて重要となってきている。
債券の特性

SPTsを達成できなかった場合、クーポンステップアップ、あるいは償還期日に罰則金額を支払う。尚、レポーティングが指定されたタイミングで公表されない場合も、SPTsの未達成とみなす。

レポーティング

KPIsのパーフォーマンスやSPTsの達成状況等必要な情報を年次報告書やサステナビリティ報告書で毎年報告する。これらレポーティングにはSPTsの達成に寄与した事項やSPTsの見直しの必要性がある場合の説明などを含む。

検証

毎年SPTsに対する同社のパフォーマンスについて独立した外部検証を実施。同検証報告書を上記レポーティングとともに開示する。

外部レビュー

2023年7月、サステナビリティ・リンク・ファイナンシング・フレームワークに関してS&P GlobalよりSPOを取得。ICMAのサステナビリティ・リンク・ボンド原則に沿ったものとなっていることが確認されている。ただし、コメントとして、KPI1についてはベースラインの数値はクロアチアや他のEUの都市と比較して高いものの、SPTsの目標値が他都市等との比較で野心的がどうかについて情報が不足、KPI2については、再エネ利用にかかるベースラインデータについては確認できるものの過去のトレンドのデータが不足としている。

  • 出所: Environmental Finance(2023) Environmental Financeデータベース、Zagrebacki Holding (2023) “Sustainability-linked Bond Framework”、S&P Global (2023) “Second Party Opinion” を基に環境省作成