ポイント

酪農におけるGHG排出削減のSPTs達成のために多様な方策を講じている事例

  • ベルグループは、フランスのチーズを中心とする乳製品の製造・販売を行う企業である。乳製品製造・販売企業がバリューチェーン全体でGHGのネットゼロを目指すとともに、健康的な製品とSPTsを結び付けている。SPTsは、乳製品の原料となるミルク生産段階で発生するGHGの削減(牛のゲップ削減サプリメント、再生型農業、森林伐採防止等)等の方策を通じて実現される見込み。

詳細

発行概要 発行年月 金額(百万) 償還期日 利率
1 2023/1 190 EUR 2035/1 変動
2 2023/1 120 USD 2035/1 変動
3
4

2022年7月にサステナビリティ・リンク・ファイナンシング・フレームワークを策定。同年Moody’sよりSPOを取得。
上記は私募債のかたちで発行。
以下は、全て2022年のサステナビリティ・リンク・ファイナンシング・フレームワークに関する情報。

サステナビリティ計画との関係

同社のサステナビリティ戦略の優先事項は以下の分野であり、これらは、同社が発行したSLBのSPTsに関連づけられている。

  • 健康的な食品への貢献
  • 持続可能な農業の促進
  • 責任ある製品のパッケージング
  • 気候変動への対応。GHG削減ではスコープ1と2は2025年までに、スコープ3は2050年までにネットゼロとする。SBTiが承認した目標であるスコープ1と2は2035年までに2017年比で75.6%、スコープ3は同じく25%削減を実現する。乳牛の飼料確保にともなう森林破壊をゼロとする。原料となるミクルは約1,400の生産者から調達するため、これらのGHG削減を図る。
SPTs
  • KPI1: スコープ1と2のGHG排出量:2017年(197,993トンCO2eq)を基準として、2026年26.5%、2028年35.7%、2035年75.6%削減
  • KPI2A: スコープ3のGHG排出量:2017年(5,098,634トンO2eq)を基準として、2035年25%削減
  • KPI2B: ミルク生産者のGHG削減:2028年までに生産者の90%がGHG削減計画作成のためのデータを収集し、80%がGHG削減計画の実施結果を測定・検証
  • KPI3:健康的な家庭向け製品(栄養素の構成等から指標化)の比率:2028年において83%(2021年は72%)
KPIs
  • 上記の4つのKPIs。スコープ1と2はグループ全体のGHG排出量の4%を占めるに過ぎないが、スコープ3は96%を占めており、そのなかでミルク生産部分が67%を占め、KPI2Aと2Bは特にマテリアルなものとなる。
債券の特性
  • SPTを達成できなかった場合、クーポンステップアップ、プレミアム支払い、あるいはマージン調整を適用するが、それはSLB、SLLなど金融商品により異なる。SLLの場合、SPTs達成の場合にマージンがステップダウンするケースもありうる。
レポーティング
  • KPIsのパーフォーマンスやSPTsの達成状況等必要な情報を毎年報告するとともに、SPTsのパフォーマンスに影響を及ぼし得る場合にも情報を開示する。
検証
  • 毎年SPTsに対する同社のパフォーマンスについて、独立した外部検証を実施。同検証報告書を開示する。
外部レビュー
  • 2022年7月、サステナビリティ・リンク・ファイナンシング・フレームワークに関してMoody’sよりSPOを取得。ICMAのサステナビリティ・リンク・ボンド原則やLMA/APLMA/LSTAのサステナビリティ・リンク・ローン原則に沿ったものとなっているかを含めレビューを実施。KPIの設定については、マテリアリティ、過去からのトレンドとの比較、同業者との比較、国際ベンチマークとの比較を通じて評価。ただし、KPI2BとKPI3についての国際ベンチマークは今のところ参照できるものがないとしている。
  • 出所:Moody’s (2022) “Second Party Opinion” を基に環境省作成