グリーンボンド原則(Green Bond Principles: GBP)
グリーンボンド原則(GBP)は、グリーンボンド発行に関する自主的ガイドラインです。グリーンボンドの透明性の確保、情報開示及びレポーティングを推奨し、市場の秩序を促進させるため、2014年1月に策定され、その後逐次改訂がおこなわれてきています。GBPの事務局は、国際資本市場協会(ICMA)が担っています。GBPは、グリーンボンドの国際的な基準として一般的に認識されています。
2020年6月現在の最新版はGBP(2018年版)です。GBP(2018年版)は、次の4つの核となる要素で構成されています。GBP(2018年版)における改訂事項の概要は、こちら
をご覧ください。
なお、2019年、2020年については、改訂は行われていません。一方で、グリーンボンド原則(GBP)を補完・明確化するため、①グリーンプロジェクトマッピング2019年版(英語)、②ガイダンスハンドブック:GBPの解釈等に関するよくある質問への回答集2020年版(英語)
、③SDGsとの関連性に関するハイレベルマッピング2020年版(英語)
、④インパクトレポーティング調和化に関する冊子2020年版(英語)
、⑤サステナビリティ標準及びラベルに関するレポート2020年版(英語)
、が公表されています。
1. 調達資金の使途
- グリーンプロジェクトの対象区分を例示
- 適格性のあるグリーンプロジェクトは、5つの環境目的(①気候変動緩和策、②気候変動適応策、③自然環境保全、④生物多様性保全、⑤汚染対策)に資するものとして規定
2. プロジェクトの評価と選定のプロセス
- グリーンプロジェクトの選定基準やプロセス等について、投資家に伝達すべき点(環境面での持続可能性に係る目標、グリーンプロジェクトとして判断するプロセス、適格性の基準)を規定
3. 調達資金の管理
- 調達資金は別勘定で管理すること、および、管理の透明性確保について規定
4. レポーティング
- 調達資金の使途に関するレポーティングの内容等について規定
- 特に、調達資金全てがグリーンプロジェクトに充当されるまで、また、その後も大きな状況の変化があった場合は、適時に調達資金の使途に係る最新情報を公開するべきと規定
- プロジェクトによる効果の測定にあたっては、定性的にまた可能な場合は定量的に行い、その定量的な測定の方法論および、または前提条件を開示することを推奨
上記4つの核となる要素には含まれていませんが、GBPは外部レビューについても定めています。グリーンボンドの発行体は、GBPの4項目と整合していることを確認するため、外部レビューの実施を推奨しています。
また、外部レビュー機関によるレポートの内容と情報開示、外部レビュー機関の専門性と倫理的基準に関する自主的ガイダンスを定めた「外部レビューに関するガイドライン」が2018年に策定され、2020年に改訂されました。同ガイドラインでは、外部レビューのサービスとしてセカンドパーティ・オピニオン、検証、認証、スコアリング/レーティングの4つを定義した上で、外部レビュー機関が備えるべき5つの倫理的・専門的観点からの原則として、①整合性(Integrity)、②客観性(Objectivity)、③専門的能力および適切な配慮(Professional competence and due care)④機密性(Confidentiality)、⑤専門家としての振舞い(Professional Behaviour)をあげています。これらの原則に基づき、以下のことが外部レビューに求められています。
- 外部レビューを実施するための組織構造や実施手順、外部レビュー実施のために必要な経験や資格を有するスタッフの配置
- 外部レビューの目的・範囲、独立性と利益相反に関する声明、定義、分析のアプローチや手法、レポートのアウトプットなどに関する情報の開示
- グリーンボンドの要件に合うプロジェクト分野に関する専門性、環境面での利点の評価、インパクトや関連するリスクに対する評価、グリーンボンド原則との整合性の確認
尚、「外部レビューに関するガイドライン」は2020年に改訂されましたが、特にセカンドパーティー・オピニオンに関する独立性の重要性について補完されています。外部レビューに関するガイドライン2020年版(英語)はこちらをご覧ください。
参考までにGBPの日本語版(2018年)は、こちらをご覧ください。
ICMAでは、2018年に新たにサステナビリティボンド・ガイドラインを策定しました。同ガイドライン(およびICMAの「Guidance Handbook
」)では、サステナビリティボンドは、調達資金全てがグリーンプロジェクトやソーシャルプロジェクトの初期投資又はリファイナンスのみに充当され、かつ、グリーンボンド原則とソーシャルボンド原則の4つの核となる要素に適合する債券としています。また、環境および社会的便益の両方がある場合、それをグリーンボンド/ソーシャルボンド/サステナビリティボンドのいずれで称するかは、発行体にゆだねられているとしています。
*ソーシャルボンド原則はソーシャルボンド発行の自主ガイドラインとして2017年に策定され、現在2020年版に更新されています。
参考文献
- ICMA (2018) 「グリーンボンド原則 2018: グリーンボンド発行に関する自主的ガイドライン」
- ICMA (2018) 'Green Bond Principles Voluntary Process Guidelines for Issuing Green Bonds'
- ICMA (2019) 'Green Project Mapping'
- ICMA (2020) 'Guidance Handbook'
- ICMA (2020) 'High-Level Mapping to the SDGs'
- ICMA (2020) 'Harmonized Framework for Impact Reporting'
- ICMA(2020)'Sustainability Standards and Labels - Overview for Green Bond Market Participants'
- ICMA(2020)'Guidelines for Green, Social and Sustainability Bonds External Reviews'